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第3章(3)レノアside
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しおりを挟む「本日はお嬢様の素敵なお姿が見られて、大変嬉しゅうございました」
「もうっ、からかわないでレベッカ。……呆れてるんでしょう?名家の令嬢が、祝いの席で男性に抱き付くなんて」
クスクスと笑うレベッカの表情から、"素敵な姿"を指す意味が着飾った容姿ではなく、今日の私の行動の事なのだと分かる。
いけない事だと。恥ずかしい事だと、頭の中では分かっていた。
それでもあの瞬間。ツバサを見つけて瞳が重なった瞬間、止まらなかった。
彼しか見えなくて、ただ傍に行きたくて、触れたくて、身体が勝手に動いてしまったの。
でも、私のその軽率な行動がツバサに迷惑をかけてしまった。
きっと会場のお客様達に不審な目で見られ、母ミネアに何か言われてしまったのだろう……。
『待ってて。
前夜祭が終わるまで、待ってて……』
せっかく来てくれたのに、嫌な気持ちにさせてしまったに違いない。
私の心の中の叫びなど、届いている筈がない。
そう思って俯いていると、レベッカが私に二つ折りにしてある小さなメモを差し出して言った。
「いえ、私はあのお姿こそが本当のお嬢様だと……。レノアーノ様らしい、と思っておりますよ?」
「?……レベッカ?」
「それに、あの男性は司会者の姿をした私がお嬢様の執事である事を見抜いておりました」
「!……え?」
「それで、会場を去る前に私にこのメモを渡してきたのです。お嬢様は男性を見る目がお高いですね」
「!っ……」
レベッカの言葉に私は思わず奪うようにしてメモを手にした。このメモを彼女に渡した人物を思い浮かべるだけで、心の震えが指に伝わってしまう。
深呼吸をして、力を込めて開いた、そこには……。
ーーーレノアが来るのを待ってるーーー
昔、文通で見慣れた字と、あの頃と変わらない短い文章。
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