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第3章(1)ツバサside
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しおりを挟む「ツバサ様、もう少し中央に行かれては?」
「いや、俺はここでいい」
シオンのすすめを俺は断る。
特に決めたられた席のない立食形式のパーティーで良かった。
俺は特に集まった人達と会話する事もなく、壁際の方で待機してレノアーノ様が入場される時を待った。
目立たないよう過ごして、頃合いを見て失礼のない程度で退出しようと思っていた。
しかし、俺は忘れていたんだ。彼女は俺が思っている以上に、真っ直ぐで破天荒な事を……。
「皆様、大変お待たせ致しました。
レノアーノ様のご入場です。どうぞ、拍手でお出迎え下さい!」
薄暗くなった会場。
司会者のアナウンスと共に大きな扉が開いて、ものすごい歓声と拍手があがる。
扉を潜り、スポットライトが当てられた先に現れたその女性が軽く会釈して、上半身を起こして微笑むと、歓声と拍手はよりいっそう大きくなった。
まるで、夜空に大きな打ち上げ花火が上がったみたいだーー。
視線の先で微笑むレノアーノ様を見て、俺はそう思った。
彼女のスレンダーなスタイルの良さが際立つ作りのドレスだが、色は堅すぎない柔らかな黄色。ふわっと巻いた赤茶色の髪を綺麗に結い上げて、お化粧とアクセサリーで飾られたその姿は本当に女神みたいで……。
スポットライトを浴びてキラキラと輝くその彼女の立つ場所は、ますます別世界のように思えた。
遠くから眺める事にして、正解だった。
見惚れてしまって瞬きすら、拍手する手すら動かせずにいるこんな自分を見られたら、俺はーー……。
「ーーッ!……ツバサッ?!」
それは、まさかの出来事だった。
ぼんやり見つめていた俺の視線と、遠くで見開かれた美しいアーモンドアイが重なる。
「っ……え?」
名を呼ばれて、美しい視線に貫かれて俺はようやくハッとした。
完全に油断していた。一瞬で会場内はザワつき始め、招待客の視線はレノアーノ様の視線の先である俺にちらほら向けられていた。
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