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第2章(3)ヒナタside
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しおりを挟む7歳の時、年の離れた弟が産まれた。
私が1歳の時に産まれた弟のヒカルの事は、私自身も赤ちゃんだったから全く覚えていない。
けど、その年の離れた弟ツバサが産まれた時の事はすごく鮮明に覚えている。
私の両親は色んな事情があって、ヒカルが産まれる前に一度離縁した。
いっぱいいっぱい大変な事があったみたいだけど、それを乗り越えた両親は私が5歳の時に再び再婚。
想い合いながらも一度離れ離れになったからか、両親はもう本当にラブラブで……。でも、私はそんな仲の良い両親が大好きだった。
お父さんにそっくりな男の子がほしい。
ずっとそう願っていた母が、その願い通りに父にそっくりな男の子を産んだ。それがツバサ。
父にそっくりな白金色の髪と瞳。虹彩異色症で片目が黒かったけど、それ以外は父をそのまんま小さくした感じで、もう母はメロメロ。
あまりの溺愛ぶりにヒカルと二人で若干ヤキモチを妬く時もあったけど、ツバサは本当に姉の私の目から見ても可愛くて、天使みたいで「ねーちゃ」って呼ばれると、もう、堪らなかったなぁ~。
そんな、見た目も綺麗でみんなから愛されるツバサが成長と共に辛い目に遭うなんて、きっと誰も思わなかった。
最初に異変に気付いたのは、ツバサが3歳の時。
遊ぶ為に広場に行こう、と誘うとツバサが首を振って言った。
『いっぱいこえがきこえるからやだ』って。
いっぱい声が聞こえる?
いつも行く中央広場には確かにたくさんの人が集まるから、そう言っているんだと思った。
この子はきっと騒がしい場所が苦手なんだと単純に思って、私は仕方なく自宅の建物の下にある敷地内でツバサと遊ぶ事にした。
すると今度は……。
『たすけてっていってる』
そう言って、辺りをキョロキョロ見渡すツバサ。
でも私には何も聞こえなくて「何も聞こえないよ?」って返すと……。
『にゃーがたすけてっていってるの!』と言って駆け出した。
私が慌てて後を追うと、ツバサが足を止めた先の柵に潜ろうとした際に引っかかってしまったのか、猫が必死にもがいて助けを求めていたのだ。
私には何も聞こえなかった。
……いや。
この子は、きっとものすごく聴力が優れているんだ。
と、この時私は違和感を覚えながらもそう思ってた。
でも、その日を境にツバサはどんどん人混みを避けるようになって、家族で出掛けてもうずくまって自分の手で両耳を塞いでいた。
両親もおかしいと思いながらも、「この子はきっと人見知りなんだ」って、まだ……この時は思おうとしていた。
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