25 / 172
第2章(2)ツバサside
2-1
しおりを挟む◇side:タロ
「タロくん、ありがとうございました。
そろそろあがってください」
昼ご飯を食べて戻ってきた宮司さんが、授与所に座っていた僕に声をかけた。
「あ、はい。
けど、今日は学さんが歯医者さんに行ってて帰りにこちらに寄ってくれるので、それまでここで待たせてもらってもいいですか?
前にクラフトマーケットで絵を買ってくれた歯医者さんで、神社のすぐ近くらしいので」
「それは構いませんが……こんなお昼どきに歯医者やっているんですか?」
「あ、いえ。
ほんとは午前中の予約だったんですけど、歯医者さんから電話があって、予約のミスで他の人と時間が重なってしまったので時間をずらしてもらえないかって言われて、それでお昼になったらしいです」
僕が事情を説明すると、宮司さんはちょっと難しい顔になった。
「歯医者って、もしかして北側の通りのビルの2階に入っているところですか?」
「はい、神社のちょっと北って言ってましたから、たぶんそうだと思いますけど、それがどうかしたんですか?」
「それが実はですね。
たぶんなのですが、あそこの歯医者さんも男性を好きになる方ではないかと思うのですよ。
松下さんと似たタイプの若くてがっしりした体つきのかっこいい男性と一緒に歩いているところを、何回か見かけたことがあるので、もしかしたら松下さんのこともデートにでも誘うつもりなのではないかと、少し気になってしまいまして。
今日は木曜日ですから、歯医者は午後から休診というところも多いでしょうし」
「えっ! そんなの困ります!」
宮司さんの話を聞いた僕は慌てて立ち上がった。
「すいません、お先に失礼します!」
「あ、その歯医者、神社の裏から通りに出て右にちょっと行ったところですから」
「はい、ありがとうございます!」
そうして僕は荷物を持つと仕事着の作務衣を脱ぎつつ北へと走った。
————————————————
「タロくん、ありがとうございました。
そろそろあがってください」
昼ご飯を食べて戻ってきた宮司さんが、授与所に座っていた僕に声をかけた。
「あ、はい。
けど、今日は学さんが歯医者さんに行ってて帰りにこちらに寄ってくれるので、それまでここで待たせてもらってもいいですか?
前にクラフトマーケットで絵を買ってくれた歯医者さんで、神社のすぐ近くらしいので」
「それは構いませんが……こんなお昼どきに歯医者やっているんですか?」
「あ、いえ。
ほんとは午前中の予約だったんですけど、歯医者さんから電話があって、予約のミスで他の人と時間が重なってしまったので時間をずらしてもらえないかって言われて、それでお昼になったらしいです」
僕が事情を説明すると、宮司さんはちょっと難しい顔になった。
「歯医者って、もしかして北側の通りのビルの2階に入っているところですか?」
「はい、神社のちょっと北って言ってましたから、たぶんそうだと思いますけど、それがどうかしたんですか?」
「それが実はですね。
たぶんなのですが、あそこの歯医者さんも男性を好きになる方ではないかと思うのですよ。
松下さんと似たタイプの若くてがっしりした体つきのかっこいい男性と一緒に歩いているところを、何回か見かけたことがあるので、もしかしたら松下さんのこともデートにでも誘うつもりなのではないかと、少し気になってしまいまして。
今日は木曜日ですから、歯医者は午後から休診というところも多いでしょうし」
「えっ! そんなの困ります!」
宮司さんの話を聞いた僕は慌てて立ち上がった。
「すいません、お先に失礼します!」
「あ、その歯医者、神社の裏から通りに出て右にちょっと行ったところですから」
「はい、ありがとうございます!」
そうして僕は荷物を持つと仕事着の作務衣を脱ぎつつ北へと走った。
————————————————
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。

小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ 小さいからって何もできないわけじゃない!
渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞!
◇2025年02月18日に1巻発売!
◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!!
誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。
スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。
テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。
リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。
小型オンリーテイム。
大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。
嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。
しかしリドルに不安はなかった。
「いこうか。レオ、ルナ」
「ガウ!」
「ミー!」
アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。
フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。
実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!
元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
碧野葉菜
恋愛
フランチェスカ家の伯爵令嬢、アンジェリカは、両親と妹にいない者として扱われ、地下室の部屋で一人寂しく暮らしていた。
そんな彼女の孤独を癒してくれたのは、使用人のクラウスだけ。
彼がいなくなってからというもの、アンジェリカは生きる気力すら失っていた。
そんなある日、フランチェスカ家が破綻し、借金を返すため、アンジェリカは娼館に売られそうになる。
しかし、突然現れたブリオット公爵家からの使者に、縁談を持ちかけられる。
戸惑いながらブリオット家に連れられたアンジェリカ、そこで再会したのはなんと、幼い頃離れ離れになったクラウスだった――。
8年の時を経て、立派な紳士に成長した彼は、アンジェリカを妻にすると強引に迫ってきて――!?
執着系年下美形公爵×不遇の無自覚美人令嬢の、西洋貴族溺愛ストーリー!

婚約者の恋人
クマ三郎@書籍発売中
恋愛
王家の血を引くアルヴィア公爵家の娘シルフィーラ。
何不自由ない生活。家族からの溢れる愛に包まれながら、彼女は社交界の華として美しく成長した。
そんな彼女の元に縁談が持ち上がった。相手は北の辺境伯フェリクス・ベルクール。今までシルフィーラを手放したがらなかった家族もこの縁談に賛成をした。
いつかは誰かの元へ嫁がなければならない身。それならば家族の祝福してくれる方の元へ嫁ごう。シルフィーラはやがて訪れるであろう幸せに満ちた日々を想像しながらベルクール辺境伯領へと向かったのだった。
しかしそこで彼女を待っていたのは自分に無関心なフェリクスと、病弱な身体故に静養と称し彼の元に身を寄せる従兄妹のローゼリアだった……
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

異世界立志伝
小狐丸
ファンタジー
ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。
さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる