片翼を君にあげる①

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
23 / 172
第2章(1)ツバサside

1-2

しおりを挟む

「その様子じゃ、まだ告白もしてないだろ?
ミライさん人気者だし優しいんだから、早く告らないと誰かにとられちゃうよ?」

ミライさんは白金バッジの夢の配達人、その上優しくて、容姿も長身で綺麗な顔をした爽やかな好青年。今年33歳なのに、まだ独身だという事が信じられないというか奇跡というか。特別に付き合っている女性がいるという噂も全く聞かない、仕事一筋の真面目な人だ。

そんな絵に描いた王子様のような人だけど、俺は自分の姉がその相手に劣っているなんて全く思わない。
むしろ、お似合いだと思ってるし二人が一緒になってくれたら本当に嬉しい。

「大丈夫、姉貴は可愛いよ。
ミライさんだって、きっかけがないだけで姉貴の事絶対いいな~って思ってるって」

お世辞ではなくそう思う。
過去に二人が一緒に居るところを目撃したが、全然悪い雰囲気じゃないっていうか、むしろ楽しそうだったというか……。俺からしたら、付き合っていないのが不思議に感じた時もあったくらいだった。
あとは最後のひと押し、きっかけが足りないだけだと思っていた。

しかし、頭を撫で返した俺に姉貴は「ありがと」って微笑った後。少し俯いて言葉を続けた。


「そうね、嫌われては……いないと思う。
でも、無理よ。ミライさん、好きな人がいるもん」

「えっ?」

「あ、ミライさんが言った訳じゃないよ?
ただ、見てたらなんとなく……分かっちゃったんだよね」

姉の言葉に、俺は驚いた。
ミライさんに想い人がいるって事もそうだが、師匠と弟子として長い期間を共にした俺でさえ気付かなかったのに……。"なんとなく"とは口では言っているが、姉の雰囲気を見ればそれを確証しているのが分かるからだ。
そして、姉がそれだけミライさんの事をよく見ているんだという事が伝わってきた。

「……どんな人?」

「!……え?」

「その人、どんな人?
姉貴よりも良い女性な訳?」

俺は不機嫌な口調で尋ねた。
だって、なんだか気に入らなかった。
俺が腹を立てても仕方ない、好き合う、付き合うというのは互いの気持ちの問題だから、他人が口を挟む事なんて出来ない。
でも、そう分かっていてもモヤモヤした。

そんな俺を見て姉は少し困った表情をしたが、夜空を見上げながら教えてくれた。

「……そうね。私の目から見ても、素敵な人。
いつも自分の事よりも人の事ばっかり考えて、誰かが幸せになれるなら嘘をつき続けるの。優しい嘘つきさん」

「っ……嘘つきは、所詮嘘つきじゃん。そんなの優しさじゃない」

「一途で、一生懸命。本当は泣き虫で色んな事に不安で怯えてるのに、手探りで前に進もうとしてるの。
ミライさんもきっと、そんなところが放っておけないんだと思う」

「姉貴だってずっと、ミライさんに一途じゃん……ッ」

自分で聞いておいて、姉が恋敵を語る度に気に入らない。その相手を否定してやりたくなる。
悔しい気持ちが溢れてきて、俺はいつの間にか拳を強く握り締めていた。

すると、俺を見た姉はくすっと微笑みながら俺の頬に手を触れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界は、今以上にモテるようです。

狼狼3
ファンタジー
花壇が頭の上から落とされたと思ったら、男女比が滅茶苦茶な世界にいました。

異世界転移した優しい旅人は自分を取り巻く愛と呪いに気付かない

知見夜空
ファンタジー
生まれつきの病により18歳で命を落とした神凪命(かんなぎみこと)は、気が付くと『神の宝物庫』と呼ばれる場所に居た。 神の宝物庫は未練を抱えて死んだ魂たちが集まる場所。 そこでは魔法の道具を1つ選び、そのままの姿で異世界に行く『転移』と、高い能力や身分を持った現地人として生まれ変わる『転生』が選べる。 「でも君には『全知の鏡』である俺を持っての転移を選んで欲しいんだ」 全てを見通す鏡の賢者に自分を人間に戻して欲しいと頼まれたミコトは、彼とともに異世界へ旅立つ。 彼を人間に戻す方法を探すとともに、今度は自分が誰かの力になりたいという、彼女自身の願いを叶えるために。 素直で健気な旅人ヒロインが魔法の道具たちを駆使して、たくさんの人を幸せにする愛と魔法の異世界ファンタジー(このお話は小説家になろうにも投稿しています)。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

もう、あなたを愛することはないでしょう

春野オカリナ
恋愛
 第一章 完結番外編更新中  異母妹に嫉妬して修道院で孤独な死を迎えたベアトリーチェは、目覚めたら10才に戻っていた。過去の婚約者だったレイノルドに別れを告げ、新しい人生を歩もうとした矢先、レイノルドとフェリシア王女の身代わりに呪いを受けてしまう。呪い封じの魔術の所為で、ベアトリーチェは銀色翠眼の容姿が黒髪灰眼に変化した。しかも、回帰前の記憶も全て失くしてしまい。記憶に残っているのは数日間の出来事だけだった。  実の両親に愛されている記憶しか持たないベアトリーチェは、これから新しい思い出を作ればいいと両親に言われ、生まれ育ったアルカイドを後にする。  第二章   ベアトリーチェは15才になった。本来なら13才から通える魔法魔術学園の入学を数年遅らせる事になったのは、フロンティアの事を学ぶ必要があるからだった。  フロンティアはアルカイドとは比べ物にならないぐらい、高度な技術が発達していた。街には路面電車が走り、空にはエイが飛んでいる。そして、自動階段やエレベーター、冷蔵庫にエアコンというものまであるのだ。全て魔道具で魔石によって動いている先進技術帝国フロンティア。  護衛騎士デミオン・クレージュと共に新しい学園生活を始めるベアトリーチェ。学園で出会った新しい学友、変わった教授の授業。様々な出来事がベアトリーチェを大きく変えていく。  一方、国王の命でフロンティアの技術を学ぶためにレイノルドやジュリア、ルシーラ達も留学してきて楽しい学園生活は不穏な空気を孕みつつ進んでいく。  第二章は青春恋愛モード全開のシリアス&ラブコメディ風になる予定です。  ベアトリーチェを巡る新しい恋の予感もお楽しみに!  ※印は回帰前の物語です。

〜復讐〜 精霊に愛された王女は滅亡を望む

蘧饗礪
ファンタジー
人間が大陸を統一し1000年を迎える。この記念すべき日に起こる兇変。  生命の頂点に君臨する支配者は、何故自らが滅びていくのか理解をしない。

処理中です...