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第2章(1)ツバサside
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しおりを挟む「ふぅ~……」
夕食後。
俺はベランダに出ると、柵に肘を着いて一息ついた。
胃がはち切れそう。
てか、気持ち悪い……。
久々に姉ヒナタと兄ヒカルが二人同時に遊びに来て嬉しかったんだろうな。母さんは張り切って、せっかくみんな揃ったんだから少し早いけど俺の誕生日パーティーをしよう、ってなって、夕飯を大量に作った。
おまけにデザートにはでっかい誕生日ケーキが出てきて……。
「っ……さすがにキツ」
朝は生クリームたっぷりの甘いフレンチトースト、夜は生クリームがたっぷり塗られたスポンジケーキ。
ケーキに乗っていたイチゴが唯一の救いで最後に食べたが消しきれず、口の中にはずっと苦手な生クリームの甘さが残っている。
現在の状況は、母さんの前では平然を装って食べていたが、次第に胃もたれしてきて外の空気を吸いにベランダに来た、という訳だ。
すると……。
「ツバサ、大丈夫?」
「!……っ、なんだ姉貴か」
声を掛けられて一瞬母さんと似ている声に驚いたが、振り向いた先に居たのは姉だった。
姉は声もだが顔も母さんによく似ている。髪型がセミロングだからすぐに分かるが、髪を腰まで長くされたらパッと見他人には分からないだろう。
19歳で姉を産んで、母さんは現在44歳。見た目がいくつになっても若くて、よく姉妹に間違われるくらいだ。
姉はベランダに出てきてガラス戸を閉めると、隣に来て俺の頭をくしゃっと撫でる。
「あんたさ、まだ母さんに言ってない訳?嫌いな物は嫌い、ってハッキリ言わないと……!
今日のメニューなんて、あんたの誕生日パーティーなのに父さんの大好物ばっかりじゃない」
そしていきなりお説教。
7歳年上の姉は、世話焼きでちょっと口うるさい。
けど、すごく優しい。
俺のちょっとした変化にも気付いてくれたり、ダメな事はダメって言ってくれたり、まるで第二の母親みたいで逆らえない。
だから、怒られているのになんだか心地良くて、俺は思わず微笑ってしまうんだ。
「もう、何微笑ってるのよ!私はね、あんたの事が心配で……」
「分かってるよ、ありがと。
それより、姉貴の方はどうなの?ミライさんとなんか進展あった?」
「っな……!」
俺が質問返しをすると、姉の顔は一瞬でボッと赤く染まる。
姉の職業は怪我をした人の応急処置をしたり医師の補佐をする看護師で、現在は夢の配達人の隠れ家に勤めている。
ミライさんって言うのは現在白金バッジの夢の配達人の1人であり、最高責任者さんの息子であり、俺の元師匠。
そして、姉の長年の片想いの相手だ。
両親の知り合いだから子供の頃から知っているとは言え、ミライさんは姉の8歳上。
夢の配達人でしかも白金バッジともなると一年間ほぼ休みなしに仕事で各地を飛び回るから、普通に生活をしていたらまず会えない。
けど、看護師研修を終えて就職先が隠れ家と聞いていたから少しは何らかの進展があるのでは?と思っていたのだが……。
姉の反応を見る限りたいした進展はなさそうだ。
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