片翼を君にあげる①

☆リサーナ☆

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第1章(4)ランside

4-2

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下克上は、階級が下の者が階級の上の者に自分が得意とする勝負方法で挑む事が出来る。
つまり、挑戦種目的にはツバサが有利。
もちろん相手は白金バッジの夢の配達人なので容易い事はないが、ツバサが勝つ可能性も十分にあった。

いける!ツバサなら絶対にいける!!

まるで自分の事のように、その日が来るのを心待ちにしてた。


……でも。
ツバサの下克上の日程が決まった日。喜びの直後に届いた、信じられない報せ。
お祖父ちゃんが、仕事帰り列車事故に巻き込まれて亡くなったって……。

優しくて、カッコ良くて、自慢の、大好きなお祖父ちゃんだった。
悲報を受けてみんな悲しんだけど、1番悲しかったのはツバサのお母さん。そして、1番辛かったのはツバサだったと思う。

誰よりもお祖父ちゃんにそっくりなその容姿を受け継いだ事で、夢の配達人になる時も変に注目されて、中にはツバサが良い成績を上げれば上げるほど文句を言う人もいた。
そして、下克上を回避して、夢の配達人を辞める事になった時も、世間の反応はツバサに対して冷たいものだった。何も知らないクセに、"臆病者"だの"裏切り者"だの……。
酷い事故だったせいで遺体はすでに焼けていたし、お葬式はないに等しいくらい小さく身内だけで。当時、もう何年も前に夢の配達人を引退していていわゆる一般庶民だった祖父ちゃんの死が騒がれる事はなく、真実を自分のお母さんの為に語らないと決めたツバサは、ただ黙って全ての批判をその身に受けた。


そんなツバサに、私が出来たのは……。

「ねぇ、一緒に学校に通わない?」

傍にいる事だけだった。

夢の配達人をしていて、師匠のミライさんから特別な教育を受けていたツバサにとったら今更学校に通う必要なんてなかったのかも知れない。
それでも放っておけなくて、少しでも傍に居て支えたくて半端強引に同じ学校に通った。

幼馴染、親友、可愛い姪っ子……。
その中のどの存在でもいいから、私はツバサの特別になりたかった。
騒がしいくらいに明るく無邪気に微笑って、ツバサがその間だけでも暗い考えにならずに、私を見てくれたら嬉しかった。


でも、来年からはまた少し状況が変わる。
高等部を卒業したら、私は調査員になる為の研修。ツバサは大学部に進学。
それぞれ歩むのは、別々の道。

……おかしいな。
幼い頃から憧れて、あんなになりたいと思った調査員への夢。
それなのに今、私の心は揺れていた。

このままツバサを置いて自分だけ前に進んでしまっても、私はきっと何度も振り返ってしまう。
そうならない為に、私がツバサにしてやれる事は何かないのだろうか……?

【今回は短め更新ですみませんm(_ _)m
その代わり3月21日(日)に特別編をやります。ぜひご覧下さい(^^)】
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