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第1章(2)ツバサside
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しおりを挟む「ちょっと!うちの叔父さんに何してるのかしら?!」
黒いショートカットの女子生徒が間に割り込んできて、俺の胸倉を掴んでいるリーダーの腕をギリッと掴んだ。
更に……。
「はいは~い、そこまで!
みんな、さっさと昼食食べないとお昼休み終わっちゃうよ?」
女子生徒とそっくりな顔をした黒髪の男子生徒が現れ、リーダーの振り上げていた拳を止めた。
突然の乱入と、どう見ても歳が変わらない女子生徒の言った"うちの叔父さん"という言葉が意味不明らしく、三人組は唖然。
「ラン、ライ……」
「ツバサ、何やってんのよ!大丈夫だった?」
「食堂の前で待ってたんだけど、遅いから迎えに来たよ~」
俺が名前を呼ぶと二人はリーダーから手を離し、胸倉を掴まれた事で少し乱れた服装を直してくれる。
この二人は双子の姉弟で、女の方が姉のラン、男の方が弟のライ。
一緒にこの港街で育った幼馴染であり、さっきランが言った通り俺の姪っ子と甥っ子だ。
俺の父さんと母さんは15歳も歳が離れていて、母さんと出逢う前に父さんには別に好きな女性がいた。つまり、その女性と父さんの間に生まれたのが二人の母親であり俺の異母兄弟の姉。
複雑でややこしいが、正真正銘ランとライにとって俺は同じ歳だけど叔父さんなのだ。
夢の配達人を辞めてどうしようか迷っていた時に一緒に学校に通うよう促してくれたのも、俺が孤立しないように気にかけてくれたのも、この二人。
大事な友達であり、親戚。
「君達、無抵抗の人間殴ったら最後の大会どころじゃなくなるよ?」
「今なら見なかった事にしてあげるから、さっさと行きなさい!」
ライがにっこり笑いながら、ランが睨み付けるようにそう言うと、三人組はチッと軽く舌打ちをしてその場から去って行った。
二人のお陰で騒ぎになる事なく無事に解決。
「……わり、迷惑かけたな」
もう大丈夫だと思っていた。
夢の配達人を辞めて、普通に年相応の学園生活をして、その生活に慣れてきていたと思ってた。
それなのに……。
「じゃあ、どうすれば良かったんだよ」
なんで、あんな事を自分は言ってしまったんだろう?
もう今更、そんな事言っても何も変わらないのに……。
これもあの夢を見て、今朝色々と思い出してしまったからなのだろうか?
こんな事じゃいけない。
気を引き締め直そう。
そんな事を思いながら反省していると、俺の謝罪を全く聞いていないかのようにランとライが叫ぶ。
「げっ!ヤバいヤバい!お昼休みもう10分も経っちゃってる~!!」
「早く食堂行かないと食べる時間なくなっちゃう!ツバサ、行くよ~!!」
「っえ?!……あ、ああ」
二人に手を引っ張られて、俺はとりあえず一緒に走って食堂へ向かった。
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