片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
142 / 149
第7章(4)ツバサside

4-1

しおりを挟む

ニュースに速報が流れる二時間程前ーー。

「へいっ、いらっしゃー……。
!……おや、君は確か!久し振りだね」

「お久し振りです」

港街にある小さなアクセサリーショップ『emina』。
去年、レノアの誕生日プレゼントにブローチを買い、またレノアと港街でデートした際に立ち寄ったあの店だ。
店主さんは俺の事を覚えてくれていたようで、相変わらずの愛想の良さでニコニコと微笑みながら話しかけてくれる。

「また来てくれるなんて嬉しいなぁ。
あの後、君とあの時一緒だった女の子の事が世界的に話題になって驚いたよ。
あの時、どこか雰囲気のあるカップルだとは思ったけど、まさか世間を騒がせる大カップルだったとはね!」

店主さんは俺とレノアの立場や状況を知っていた。
まあ、アッシュトゥーナ家とドルゴア国の婚姻問題となれば当然だよな。

けど、俺には気になる事があった。
店主さんがその話題を知っているのならば、どうしても聞きたい事があったんだ。

「それで?今日はどうしたの?
あ!もしかしてまたプレゼント、かな?」

穏やかに微笑む店主さん。
その表情の奥に潜む彼を、今日は見に来た。
俺は店主さんにされた質問に答える。

「はい」

「またうちで選んでくれるなんて嬉しいね。
今度は何にする?イヤリング?ネックレス?それともーー……」

「指輪をお願いします」

その言葉に店主さんは一瞬驚いたが、すぐにニヤリッと察したように笑った。

「それって、もしかして」

「はい。
彼女に贈る結婚指輪を、貴方に作って欲しいんです」

今回、俺がこの店を訪れたのには二つの理由があった。
一つは、レノアに贈る結婚指輪を造ってもらう為。そして、もう一つは……。

「結婚指輪か!そうか、そうか!
って、事は、事は順調に進んでいるんだねっ?安心したよ!
けど、そんな大事な指輪、うちなんかで大丈夫かい?アッシュトゥーナ家のお嬢さんの指に合うかなぁ~」

俺とレノアの事を本当に嬉しそうに聞き、少し涙ぐみながらそう言う店主さん。

そんな彼に、俺は言った。

「貴方がいい。貴方じゃなきゃダメなんです。
"レノアの本当の父親"である貴方に、造ってほしいんです」

「ーー……っ」

俺がそう言うと、店主さんの笑い声が止まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

日向はび
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」 二人は再び手を取り合うことができるのか……。 全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

処理中です...