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第7章(2)ノゾミ&ジャナフside
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しおりを挟むボクの前では微笑っていたけど、夜中に独りきりで泣いていた事を知っていた。
けど、幼いボクは何と声をかけていいかも分からなかった。
身体も心も小さかったから、何一つ包み込んであげる事が出来なかったんだ。
だから、ノゾミさんを救いたかったーー。
話を聞いてあげたかった。
支えてあげたかった。
手を握ってあげたかった。
笑顔にして、あげたかった。
その筈、だったんだ。
彼女は、母親の代わりの筈……だったんだ。
それなのに……。
『今、ミライさんと瞬空さんは、自分自身とノゾミさんへの想いで戦っています。
だから、ノゾミさんもその想いを受け止めて、応えてあげて下さい』
そう、彼女の背中を押した事を、ほんの少し後悔した自分が居た。
ボクに笑顔でお礼を言って去って行く彼女の背中を見て、寂しい、って感じて……ほんの少し、泣きたくなった。
ーーなんで?
ボクは、ノゾミさんを母の代わりに救いたかった。
瞬空さんはボクの父とは違って、ノゾミさんをちゃんと愛している。だから、彼女が勇気を出して前に踏み出せば、二人で歩んで行ける未来があるかも知れないんだ。
ボクはその背中を押した。
幼いあの日には出来なかった事を、後悔を、ノゾミさんを救う事で気持ちを晴らそうとしていたんだ。
でもーー……。
「違うだろ?ジャナフ」
「!っ、……ツバサ」
ノゾミさんの背中を押した後、ボクは下剋上の場に戻れなかった。
廊下の長椅子に座ったまま、立ち上がれなくなっていたボクの元に来てくれたのはツバサ。彼のまとう空気を見たら、下剋上はすでに終わり、また彼が白金バッジを手にした事が分かった。
今までのボクなら、すぐに「おめでとう!」って言葉が口から出ていたであろう。
でも、この時のボクは、
「違う、って……?」
ツバサに、そう聞き返していた。
そんなボクの隣に座って、ツバサが言う。
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