片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

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第7章(2)ノゾミ&ジャナフside

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ボクの前では微笑っていたけど、夜中に独りきりで泣いていた事を知っていた。
けど、幼いボクは何と声をかけていいかも分からなかった。
身体も心も小さかったから、何一つ包み込んであげる事が出来なかったんだ。

だから、ノゾミさんを救いたかったーー。

話を聞いてあげたかった。
支えてあげたかった。
手を握ってあげたかった。
笑顔にして、あげたかった。

その筈、だったんだ。
彼女は、母親の代わりの筈……だったんだ。
それなのに……。

『今、ミライさんと瞬空シュンクウさんは、自分自身とノゾミさんへの想いで戦っています。
だから、ノゾミさんもその想いを受け止めて、応えてあげて下さい』

そう、彼女の背中を押した事を、ほんの少し後悔した自分が居た。
ボクに笑顔でお礼を言って去って行く彼女の背中を見て、寂しい、って感じて……ほんの少し、泣きたくなった。

ーーなんで?

ボクは、ノゾミさんを母の代わりに救いたかった。
瞬空シュンクウさんはボクの父とは違って、ノゾミさんをちゃんと愛している。だから、彼女が勇気を出して前に踏み出せば、二人で歩んで行ける未来があるかも知れないんだ。

ボクはその背中を押した。
幼いあの日には出来なかった事を、後悔を、ノゾミさんを救う事で気持ちを晴らそうとしていたんだ。

でもーー……。

「違うだろ?ジャナフ」

「!っ、……ツバサ」

ノゾミさんの背中を押した後、ボクは下剋上の場に戻れなかった。
廊下の長椅子に座ったまま、立ち上がれなくなっていたボクの元に来てくれたのはツバサ。彼のまとう空気を見たら、下剋上はすでに終わり、また彼が白金バッジを手にした事が分かった。
今までのボクなら、すぐに「おめでとう!」って言葉が口から出ていたであろう。
でも、この時のボクは、

「違う、って……?」

ツバサに、そう聞き返していた。
そんなボクの隣に座って、ツバサが言う。
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