131 / 149
第7章(1)ノゾミ&瞬空side
1-6
しおりを挟むーー……けど。
「私には、全てを投げ出して其方を攫う事は出来ない。……出来ない、のだ」
それ以上、言葉が出なくなった。
俯いて、目を瞑った。
最低、と。
殴られても良かった。
でもノゾミは、最後まで本当に美しかった。
「ーーそれでこそ、瞬空ですわ!!」
フワッと、指輪のケースを握り締めていた手を両手で包み込まれる。
目を開けると、そこにあったのは……。ずっと見たかった、眩しい、愛らしい笑顔。
ノゾミが跪いていた私の前で、自らも両膝を着いて屈んでいた。私の手を包む両手をしっかり握り締めながら、祈るような姿で告げる。
「私、忘れない。これからも、残りの人生も、その先の未来も、きっと……。
"私達の想いは確かにここに在った"、と貴方が形にしてくれたから、もう大丈夫」
そんな彼女を目にして、
「もしも次に生まれ変わる事が出来たら、その時は必ず一緒になろう」
そんな、馬鹿な言葉が口から出かけて、私は飲み込んだ。
「瞬空。私はここで、この想いを胸に生きます。
貴方が好きになってくれた自分を……。ううん、貴方のおかげで好きになれた自分に誇りを持って、生きます!」
真っ直ぐに前を向いている彼女を、あるかも分からない未来や来世にまで縛ってはいけない。
だから私は、心の中で誓う。
『もしも生まれ変わる事が出来たなら、その時は何よりも其方を優先しよう。
目が醒めたら真っ先に、其方に逢いに行こう。
ノゾミ、其方だけの私になろう』
そう、心で誓いを立て、微笑った。
「それでこそ、其方だな。ノゾミ!」
ーー……ああ、ようやく。
ようやく、あの日の後悔をやり直せた。
私達は、二人で微笑み合う事が出来た。
今この時は、きっと今の私達に最高の時。
二人の最後の時間に相応しい、時だった。
私も忘れはしない。
強くてまっすぐな瞳も、眩しい笑顔も……。
いつか再び巡り逢える、その瞬間までーー。
……
…………。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる