片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

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第6章(5)ミライ&瞬空side

6-5-3

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【瞬空side】

あの日を思い出す。
私が白金バッジを手にした下剋上で、幼いノゾミは熱い声援を送ってくれた。
私よりも、身内よりも、誰よりも必死になってくれた。

強くなるのが当たり前だった。
勝つ事も、最強でいる事も当然でなくてはならない。と、故郷で言われ続けていた私にとって、そんな風に自分を応援してくれる存在は初めてだった。

だから、分からなかった。
私の為に必死になれるノゾミが。
私に微笑みかけてくれるノゾミが。
私が免許皆伝を告げた時に、「嫌だ」と言ったノゾミが……。

ーー……でも。
今なら分かる。やっと、分かった。

ノゾミ。
私は其方に愛され、そしてまた私も、其方を愛しているのだ。

私の人生の中で、1番必要ないと思っていた感情の筈だった。
むず痒く、どうしていいのか分からず、胸を掻き立てられる。
一見、強さを求める私には邪魔なものにすら思える。

けど、不思議なものだ。
其方の声援は、いつだって私の背中をグッと強く押してくれて……。もう一歩、と限界の向こうへと導いてくれるのだ。

……
…………。

負ける訳には、いかないーー。

私も、ミライ殿も同じ気持ちだった。
おそらくその想いの強さは、どちからが上か、なんて分からない程に……。

戦えば、どちらかが勝者になり、どちらかが敗者になるのは当たり前。
相手が例え自分よりも格上だろうが、格下であろうが負けたくはない。故に、"楽しい"、"嬉しい"などと心弾む事など今までなかった。

けど、私は今、ミライ殿を見て笑っていた。
ミライ殿も、笑っている。
互いに負けられない、負けたくない戦いである筈なのに、笑っていた。

曲剣シャムシールを両手で持ち、構えると、ミライ殿も両手に拳を握り、片足を少し後ろに引いて腰を落として構える。

次の一撃で、全てが決まるーー。

きっとミライ殿も、そう感じていたに違いない。

私とミライ殿は短く息を吸うと、同時にその場を駆け出した。
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