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第6章(4)ノゾミside
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***
見ていられなかった。
2人の戦いが、何だかとても痛かった。
こんな感情になるのは初めてで、自分でどうしたらいいのか分からなくなって……。咄嗟にあの場から逃げ出してしまった。
訓練所から出た私は、扉を閉めて廊下にある長椅子にそっと腰を降ろす。
鳴り止まない激しい鼓動。必死に落ち着けようとするけど、なかなか鎮まらない。
私には、目の不自由な最高責任者の代わりに判定を下す使命があるーー。
一刻も早く戻らねば、と深呼吸をしていると、訓練所の扉が開いて、誰かがこちらにやって来た。
その人は……。
「っ、……ジャナフ君」
私の事を、1番理解してくれている人だった。
彼の姿を見たら、ほんの少し、ホッとした気がした。
ジャナフ君は私に微笑みかけると、私の隣にそっと腰掛けて口を開く。
「二人の戦い、観なくてもいいんですか?」
いつも通りの優しい声。
「……そうね。
責任ある立場なのに、何をしているのかしらね」
私は震えている自分を隠すように、拳をギュッと握り締めた。
そして、「戻るわ」と言って、再び訓練所へと戻ろうとした。
けど、その瞬間にジャナフ君が言った。
「ノゾミさんは、しっかり愛されていますよ」
「ーー……っ、え?」
うるさかった鼓動が、一瞬、止まった。
視線を向けると、ジャナフ君は相変わらず優しい表情を浮かべたまま言葉を続ける。
「お兄さんからも、瞬空さんからも、ノゾミさんはしっかりと愛されています」
「……」
ジャナフ君が何故そんな事を言うのか、最初は分からなかった。……けど。
「ノゾミさんがあの場から逃げ出してしまったのは……そんな二人の強い気持ちが、言葉にされなくても伝わったからでしょう?」
「!っ、……」
そう言われて、分からなかった自分の気持ちが、ストンッと一気に腑に落ちた気がした。
そう、私は……。
自分が二人にどう想われているのか、ずっとずっと不安だったのだ。
見ていられなかった。
2人の戦いが、何だかとても痛かった。
こんな感情になるのは初めてで、自分でどうしたらいいのか分からなくなって……。咄嗟にあの場から逃げ出してしまった。
訓練所から出た私は、扉を閉めて廊下にある長椅子にそっと腰を降ろす。
鳴り止まない激しい鼓動。必死に落ち着けようとするけど、なかなか鎮まらない。
私には、目の不自由な最高責任者の代わりに判定を下す使命があるーー。
一刻も早く戻らねば、と深呼吸をしていると、訓練所の扉が開いて、誰かがこちらにやって来た。
その人は……。
「っ、……ジャナフ君」
私の事を、1番理解してくれている人だった。
彼の姿を見たら、ほんの少し、ホッとした気がした。
ジャナフ君は私に微笑みかけると、私の隣にそっと腰掛けて口を開く。
「二人の戦い、観なくてもいいんですか?」
いつも通りの優しい声。
「……そうね。
責任ある立場なのに、何をしているのかしらね」
私は震えている自分を隠すように、拳をギュッと握り締めた。
そして、「戻るわ」と言って、再び訓練所へと戻ろうとした。
けど、その瞬間にジャナフ君が言った。
「ノゾミさんは、しっかり愛されていますよ」
「ーー……っ、え?」
うるさかった鼓動が、一瞬、止まった。
視線を向けると、ジャナフ君は相変わらず優しい表情を浮かべたまま言葉を続ける。
「お兄さんからも、瞬空さんからも、ノゾミさんはしっかりと愛されています」
「……」
ジャナフ君が何故そんな事を言うのか、最初は分からなかった。……けど。
「ノゾミさんがあの場から逃げ出してしまったのは……そんな二人の強い気持ちが、言葉にされなくても伝わったからでしょう?」
「!っ、……」
そう言われて、分からなかった自分の気持ちが、ストンッと一気に腑に落ちた気がした。
そう、私は……。
自分が二人にどう想われているのか、ずっとずっと不安だったのだ。
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