片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
116 / 149
第6章(4)ノゾミside

6-4-3

しおりを挟む

果たして、どちらが決めるのかーー……?

手に汗が滲み、鼓動が身体に痛く響いた。
どちらが勝ち、どちらが負けようとも、この勝負は私にとっては関係ない問題の筈だった。
身内であろうが、好意を寄せる相手であろうが、私は夢の配達人の最高責任者マスターの秘書である以上、私情を挟んではならない。

それなのにーー……。

二人を見ているのが、辛い。
二人のどちらかが敗北する、と言う現実が、私の胸を締め付ける。
今にもこの場から逃げ出してしまいそうな私。

しかしその時、戦場が動いた。

先に動いたのは、瞬空シュンクウ。2本の曲剣シャムシールを逆手で持つとその場を駆け出し、兄に詰め寄ると攻撃を仕掛ける。
ギリギリまで動かない兄だったが、それは確実に斬撃を防ぐ故の策。攻撃を見極めた兄は、交わしながら自らの上着を脱ぎ、背後に回る一瞬で瞬空シュンクウの首にそれを巻き付けた。

ニヤリッと笑う兄。
しまった、と、表情をしかめる瞬空シュンクウ

背後に回った兄は、瞬空シュンクウを捕らえて放さない。首に巻いた服を更に強く締め付けると、瞬空シュンクウの首をググッと締め続けた。

「っーー……さっすがミライきゅん!!
これは、さすがに勝負アリ、なんじゃない♪」

塀に座って勝負を観ていたミヅクが、脚をパタパタされながら興奮と喜びが入り混じった声をあげる。

瞬空シュンクウは首を締められる、と悟った瞬間に曲剣シャムシールを捨て、自らの首と服の間に手を入れて、締め付けられる力を軽減させようと試みているが……。
駄目だ、なかなか振り解く事が出来ない。身体を左右に振るが、兄が全く力を緩めず隙も見せない。

これが、稽古ではない真剣勝負。
相手が戦意を喪失するまで……。もう立ち上がれなくなる状態まで、絶対に手を抜く事をしない。 

今まで色んな夢の配達人の下剋上も見てきたし、自らが危険な場に居合わせる事も多々あった。
けれど、今回の下剋上は……。比べ物にならない程に、私の胸に突き刺さる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ
恋愛
 王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。 「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」  しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。    完結致しました(2022/06/28完結表記) GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。 ★お礼★  たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます! 中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

貧乏神と呼ばれて虐げられていた私でしたが、お屋敷を追い出されたあとは幼馴染のお兄様に溺愛されています

柚木ゆず
恋愛
「シャーリィっ、なにもかもお前のせいだ! この貧乏神め!!」  私には生まれつき周りの金運を下げてしまう体質があるとされ、とても裕福だったフェルティール子爵家の総資産を3分の1にしてしまった元凶と言われ続けました。  その体質にお父様達が気付いた8歳の時から――10年前から私の日常は一変し、物置部屋が自室となって社交界にも出してもらえず……。ついには今日、一切の悪影響がなく家族の縁を切れるタイミングになるや、私はお屋敷から追い出されてしまいました。  ですが、そんな私に―― 「大丈夫、何も心配はいらない。俺と一緒に暮らそう」  ワズリエア子爵家の、ノラン様。大好きな幼馴染のお兄様が、手を差し伸べてくださったのでした。

夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

☆リサーナ☆
恋愛
夢の言葉と約束の翼(上)の続編です。 ようやく和み始めた、マオとアカリを引き裂く影……。 「僕は、本当に”マオ”なの?」 自分に疑問を抱き続ける彼が、最後に下す答えはーー? 「貴方と一緒なら、きっと何に生まれ変わっても楽しいと思います」 変わらない愛を囁き続ける彼女の元に、最後に迎えに来るのはーー? 「夢の言葉シリーズ」 ヴァロンとアカリの運命が、最後の結末に向けて大きく進み出す。 〈別サイトにて〉 2018年11月2日(金) 投稿・連載開始 2019年5月22日(金) 完結

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

処理中です...