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第6章(4)ノゾミside
6-4-3
しおりを挟む果たして、どちらが決めるのかーー……?
手に汗が滲み、鼓動が身体に痛く響いた。
どちらが勝ち、どちらが負けようとも、この勝負は私にとっては関係ない問題の筈だった。
身内であろうが、好意を寄せる相手であろうが、私は夢の配達人の最高責任者の秘書である以上、私情を挟んではならない。
それなのにーー……。
二人を見ているのが、辛い。
二人のどちらかが敗北する、と言う現実が、私の胸を締め付ける。
今にもこの場から逃げ出してしまいそうな私。
しかしその時、戦場が動いた。
先に動いたのは、瞬空。2本の曲剣を逆手で持つとその場を駆け出し、兄に詰め寄ると攻撃を仕掛ける。
ギリギリまで動かない兄だったが、それは確実に斬撃を防ぐ故の策。攻撃を見極めた兄は、交わしながら自らの上着を脱ぎ、背後に回る一瞬で瞬空の首にそれを巻き付けた。
ニヤリッと笑う兄。
しまった、と、表情をしかめる瞬空。
背後に回った兄は、瞬空を捕らえて放さない。首に巻いた服を更に強く締め付けると、瞬空の首をググッと締め続けた。
「っーー……さっすがミライきゅん!!
これは、さすがに勝負アリ、なんじゃない♪」
塀に座って勝負を観ていたミヅクが、脚をパタパタされながら興奮と喜びが入り混じった声をあげる。
瞬空は首を締められる、と悟った瞬間に曲剣を捨て、自らの首と服の間に手を入れて、締め付けられる力を軽減させようと試みているが……。
駄目だ、なかなか振り解く事が出来ない。身体を左右に振るが、兄が全く力を緩めず隙も見せない。
これが、稽古ではない真剣勝負。
相手が戦意を喪失するまで……。もう立ち上がれなくなる状態まで、絶対に手を抜く事をしない。
今まで色んな夢の配達人の下剋上も見てきたし、自らが危険な場に居合わせる事も多々あった。
けれど、今回の下剋上は……。比べ物にならない程に、私の胸に突き刺さる。
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