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第6章(4)ノゾミside
6-4-2
しおりを挟む懐に入ろうとした兄に向かって、勢い良く振られた瞬空の曲剣が迫る。
が、兄は瞬空の手首を掴んでそれを止めると、身体を半転させて脇腹に蹴りを仕掛けた。
バキッ……!!!
鋭く鈍い音がした。
しかし、瞬空が怯む様子は全くなかった。おそらく、彼の鍛え上げられた鋼のような筋肉が、兄の蹴りのダメージを軽減させたのだろう。
すぐに攻め手に回る瞬空。兄に掴まれている手を力強く振って、相手の体勢を崩そうと試みる。
が、それを兄が逆に利用する。瞬空に振られた勢いを利用して、今度は相手の後頭部に向かって凄まじい飛翔蹴りを仕掛けた。
そして、それを瞬空はもう一方の腕で防御する。
攻撃した側も、防御した側も、互いにぶつかり合った部分にダメージがある筈だ。
それでも、お互い一歩も譲らない攻防が続くーー。
先に疲れを見せたり、スキを見せた方が負け。
白金バッジの二人は……。兄と瞬空は、その後も互いに手を緩める事なく激しい争いを続けた。
……
…………。
…………
………………
観戦席にいる者達はみんな、一言も発しずに見守る。
どんなに互いが並外れた力の持ち主者同士でも、機械ではない以上疲れの色は隠せない。
互いに手練れと戦っているのだから尚更だ。
数十分もすれば、激しい戦いを続ける二人の息が少しずつ上がり始めている事が分かった。
そろそろ大きな一撃を入れなければ、長引くーー。
ここまで積極的に攻め合っていた二人だったが、今度は一定の距離を保つと見つめ合い、互いのスキを狙っているかのように構えたまま動かなくなった。
互いに、決め手となる一撃を仕掛けるその時に狙いを定めるーー。
二人の目は、獲物を仕留める為に相手を見つめる肉食獣のような威圧感があり、観ているこちら側にも更に緊張感が増す。
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