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第6章(2)ノゾミside
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しおりを挟む「何か食べに、行きません?」
「!っ、……え?」
「稽古はここまでにして、美味しい物でも食べに行きましょう!」
そう言うと、ジャナフ君は私の返事を待たずに手を引いて歩き出す。
「ノゾミさん、甘い物好きでしたよね?
ボクも大好きなんですけど、ツバサは甘い物苦手だから一緒に行けなくて……。だから、付き合ってほしいんです!」
一瞬で、自分も辺りも明るくなった気がした。
振り向いて見せてくれる優しい笑顔が眩しい。
繋がれた手が、じんわりと暖かい。
優しく寄り添ってくれる心が、素直に嬉しかった。
……。
それは、瞬空とでは絶対にあり得ない優しい時間だったーー。
手を繋いで、一緒に歩いて。
一緒に街中を歩いて、デートして。
テーブルを挟んで向かい合って座って、二人で一つの食べ物を分け合って、微笑み合いながらする食事。
「っ、美味い!!」
「本当!すごく美味しいっ!」
甘い物を一緒に共感出来て、楽しい時間を共有出来る幸せ。
人目を気にせず、時間を気にせず、気持ちを抑える必要もない。
「はい、どうぞ」
「!……え?でも……」
「いいんです!ノゾミさんが食べて下さい」
パンケーキの上に乗った1つしかない飾りのチョコを、ジャナフ君は私のお皿の上にそっと乗せてくれる。
大きな贈り物なんて、いらないの。これでいい。
そんな些細な気遣いが嬉しくて、私も素直になれた。
「では、いただきます。
ジャナフ君、ありがとう!」
「っ、い、いえ!」
私がそう言うと、ジャナフ君は真っ赤になって照れながら微笑む。
相手の照れた笑顔を見たら、嬉しかったーー。
こんなにも素直な、嬉しい、楽しい、って相手の心を知る事が出来る事は、こんなにも嬉しい事なのだ。
胸の中にホワホワとした優しさが広がって、まるで寒い日に温かいココアを飲んだ時のような幸せな気持ちが、私の中に広がっていた。
……
…………。
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