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第6章(2)ノゾミside
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「……ノゾミさん?大丈夫ですか?」
「!……っ、ごめんなさい。ジャナフ君」
夢の配達人隠れ家の広場。
声を掛けられて、私はハッとした。
今日は夢の配達人のたまごであるジャナフ君の訓練に付き合っていたのに、彼が筋トレをしている間についボーッとしてしまっていたようだ。
いけない。
最高責任者の秘書であり補佐である以上、未来ある夢の配達人の育成に手を抜くなんてあってはならない事だ。
しかも、大事な仕事中に私情でボーッとしてしまうなんて不覚。
私はすぐに笑顔を作ると、気持ちを持ち直して口を開く。
「筋トレが終わったんですのね?じゃあ、次は……」
「何か、ありましたか?」
「っ、……」
けど、ジャナフ君に尋ねられて、見つめられたら……。何故か、言葉が出てこなくなってしまった。
彼には嘘がつけない気がした。
まるで私の心を知っているかのように、ジャナフ君が悲しそうな表情をしていたからだ。
彼はもしかしたら、私と自分の母親を重ねているのかも知れない。
以前、ジャナフ君の母親は側室で、狭い塔の中でいつ訪れてくれるか分からない愛おしい男性を待ち続ける人生だった、と聞いた。
今の私と一緒で、永遠に愛おしい男性の1番になる事は出来なかったーー……。
……ここ数ヶ月、瞬空は私の元へは来ない。
去年、ツバサ君との下剋上を止めに入って怪我を負った後、会いに来てくれた彼に「もう来ないで」と言ったのは、自分。
なのに、胸がズキンッと痛んで泣きたくなる。
でも、泣きたくない。
泣いてしまったら、私はこの恋が間違いだったと自分自身で認めてしまう事になる気がした。
瞬空を想う気持ちを、自分で嫌なものにしてしまう気がしてならなかった。
私はただ、瞬空を愛しただけ。
その想いが、過ちやいけない事だなんて、認めなくないーー……。
知らず知らずのうちに、私は拳をギュッと強く握り締めていた。
すると、その固い拳を和らげるように、大きな暖かい手が包み込んでくれる。
「……ノゾミさん?大丈夫ですか?」
「!……っ、ごめんなさい。ジャナフ君」
夢の配達人隠れ家の広場。
声を掛けられて、私はハッとした。
今日は夢の配達人のたまごであるジャナフ君の訓練に付き合っていたのに、彼が筋トレをしている間についボーッとしてしまっていたようだ。
いけない。
最高責任者の秘書であり補佐である以上、未来ある夢の配達人の育成に手を抜くなんてあってはならない事だ。
しかも、大事な仕事中に私情でボーッとしてしまうなんて不覚。
私はすぐに笑顔を作ると、気持ちを持ち直して口を開く。
「筋トレが終わったんですのね?じゃあ、次は……」
「何か、ありましたか?」
「っ、……」
けど、ジャナフ君に尋ねられて、見つめられたら……。何故か、言葉が出てこなくなってしまった。
彼には嘘がつけない気がした。
まるで私の心を知っているかのように、ジャナフ君が悲しそうな表情をしていたからだ。
彼はもしかしたら、私と自分の母親を重ねているのかも知れない。
以前、ジャナフ君の母親は側室で、狭い塔の中でいつ訪れてくれるか分からない愛おしい男性を待ち続ける人生だった、と聞いた。
今の私と一緒で、永遠に愛おしい男性の1番になる事は出来なかったーー……。
……ここ数ヶ月、瞬空は私の元へは来ない。
去年、ツバサ君との下剋上を止めに入って怪我を負った後、会いに来てくれた彼に「もう来ないで」と言ったのは、自分。
なのに、胸がズキンッと痛んで泣きたくなる。
でも、泣きたくない。
泣いてしまったら、私はこの恋が間違いだったと自分自身で認めてしまう事になる気がした。
瞬空を想う気持ちを、自分で嫌なものにしてしまう気がしてならなかった。
私はただ、瞬空を愛しただけ。
その想いが、過ちやいけない事だなんて、認めなくないーー……。
知らず知らずのうちに、私は拳をギュッと強く握り締めていた。
すると、その固い拳を和らげるように、大きな暖かい手が包み込んでくれる。
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