片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

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第6章(1)瞬空side

1-5

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……
…………。

彼女と過ごす時間は私にとってあっという間で……。気付けば、一緒に訓練を始めて十年以上の歳月が流れていた。

この頃になると、彼女はもうすっかり大人の女性となっていた。
これ以上、傍に居てはいけない、と。彼女と一緒に居ると自然と高鳴る鼓動が、警告音のように私の身体に響く。

「お幾つに、なられましたかな?」

「あら、忘れましたの?明日でちょうど18よ」

訓練終わりに尋ねると、彼女は結んでいた髪を解いて答えた。顔を軽く振って、フワッとした髪を空になびかせながら、少しだけ両口の端を上げて微笑む。
そんな彼女に、私は言った。

「では、本日までと致しましょう」

「……え?」

「こうして二人きりで訓練をするのは、今日で最後です」

「……瞬空シュンクウ?」

あの事件以来、彼女から少女のような笑顔は消えていた。

出来ればもう一度、あの無邪気な笑顔を見たかったーー……。

そう思って、訓練と言う口実で傍に居た。
本当は、自国で成人と見做みなされる15歳に彼女がなったら、こうして二人きりの時間を設けるのはやめようと思っていた。
けれど、つい……。もう一度だけ、あと少しだけ、と一緒に居られる時間を延ばしていた。

でも、もう終わりにしなくてはーー……。

「免許皆伝です。
貴女様は充分にお強くなられた。私が教える事は、もう何もありませぬ」

お世辞ではない。
彼女はこの時すでに、余程手練てだれの者以外は誰も太刀打ち出来ない程に強くなっていた。
だから、もう大丈夫、と自分に言い聞かせた。

「師弟関係を解消致します。
明日からはまた、貴女は私にとって最高責任者マスターの御息女であり、夢の配達人の秘書。
こうして特別な時間を設けるのは、おしまいです」

彼女の顔が、見られなかった。
「では」と言って頭を下げると、上身体を起こすと同時に、逃げるように背を向けて歩き出す。

けれど、その直後ーー……。

「……嫌」

小さな、か弱い声と共に、私は背中にこれまで感じた事のない温もりと柔らかさを感じた。

彼女が、私の背に抱き付いていたのだ。
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