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第6章(1)瞬空side
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しおりを挟むもちろん、それだけが引退の理由ではないだろう。
彼自身が自らの衰えや限界を感じた事から、夢の配達人としての人生を退いたに違いない。
でも、私は信じ難い事だったんだ。
夢の配達人を引退した彼が、昔、私が憧れを抱いたその時よりも輝いて見えた事が…………。
叶えられない夢はない。
依頼された夢は何でも叶える。
そう、謳われた伝説の夢の配達人であるヴァロン殿が、その道を退いても尚、より輝いて見える事が……私には理解出来なかった。
私が同じ立場ならば……。
主の為に、祖国の為に剣を振るう事が叶わなくなったのならば、それは死と一緒。
それを失って、妻の為に、家族の為に、生きる事など考えられない……。
私は、女性を特別に愛おしく想った事がなかった。
国の掟で、自らの意志とは関係なしに許嫁が決められる、と言う気持ちが幼き日よりあったからか、異性も同性も分け隔てない気持ちで接してきた。
正直、結婚せずに独身を貫き通す事が叶うのならば、ずっと独り身でいたかった。
だが、代々国の主に剣を捧げる護衛隊長として、世継ぎを設ける事もまた私の務めの一つーー。
夢の配達人としての道も極めている最中だった為、本来の適齢期よりも遅い結婚であったが、私は25歳の時に10歳下の妻を迎えた。
身分も気立ても良く、器量良し。妻として、不満な部分など一切ない。
けれど、私が妻を特別に見る事はなかった。
まだ父上が護衛隊長として現役であった事と、夢の配達人としての道を極めている最中だ、という事を理由に、私は年に数回しか国に帰る事をしなかった。
そうする事で妻との時間を減らし、夜の営みを避けていた。
世継ぎを設ける事もまた務めーー。
そう、頭では分かってはいたものの、だからと言って気持ちと身体は伴わなかった。
もしかしたら私は、男として不能なのかも知れぬーー……。
そんな、頭にふと過ぎる思いを振り切るかのように、私は強くなる事に……。夢の配達人としての道を極める事に没頭していた。
そんな私が、まさか、自分よりも遥かに歳下の少女に心を奪われるなんて……思ってもいなかった。
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