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第6章(1)瞬空side
1-1
しおりを挟む人の三大欲求。
その中で、私が1番必要ないと思っていたのが性欲だった。
恋、愛……。
そんなものも、必要ないと思っていた。
代々蓮華国を護る護衛隊長の家柄に生まれて、主の為に自らの命を剣に変えて捧げて……。
強さが全て。誰よりも強くなり力を持つ事が、私の生き甲斐だった。
けれど、そんな私の運命はある一人の男との出逢いで少しずつ変わっていった。
彼に最初に会ったのは、10歳位の頃だろうか?
当時、蓮華国で1番強かった私の父が、異国からやってきたよそ者に負けたのだ。
しかもその男は、なんと"武器を持たない素手の男"。
その男とは、
伝説の夢の配達人ーヴァロンー。
何の武装もせずに戦う事など、当時私達の中では考えられず、あり得ない事だった。
しかしヴァロン殿は、何も持たない事で自らを軽量化し、力よりも素早さを重視して相手の懐に飛び込み、体術で父を負かしたのだ。
衝撃的、だった。
世界は広いのだ、と胸が震える程の感動を知った私は、ヴァロン殿の話を聞いて「夢の配達人になりたい!」と憧れを抱いた。
親族は最初は良い顔をしてくれなかったが、「今後国を守っていく為に、世界の事を知るのもまた勉強だ」と、限定の期間内を私の武者修行と称して夢の配達人になる事を許してくれた。
無論、私もそのつもりだった。
主の為に剣と命を捧げ、一族が誇りを懸けて守ってきた護衛隊長としての役職を自らも全うしていく人生を主軸とする事には何の異論もなかった。
あくまで主の為に、祖国の為に、より強くなる為の肥やしの一つーー。
そう、思っていた。
……
…………。
そして、私は夢の配達人になった。
夢の配達人になり、様々な道を極めし者と出逢い、時に戦う事は間違いなく私にとって身も心も成長する事に繋がっていった。
ヴァロン殿は私の憧れ。
彼に出逢わなければ、私は狭い世界の中で己の力を過信する愚かな人間になっていた事だろう。
しかし。
一つだけ、いくらヴァロン殿の事でも理解出来ない面があった。それは、
愛する人や家族の為に、夢の配達人の人生を捨てた事ーー……。
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