片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
96 / 149
第5章(3)ツバサside

3-4

しおりを挟む

「レノアーノ?寝てるの?
……レノアーノ?開けてもいい?」

返事のない様子に、ミネア様は何度かレノアに語り掛ける。
だか、レノアがそれに対して返事する事はなかった。

俺が「このままで大丈夫です」と声を掛けると、ミネア様は心配そうにこちらを見た。
でも、俺が微笑んで頷くと、ミネア様は扉の前から下がって、扉の前を譲ってくれた。
俺は扉の前に立つと、左手を扉に添えて目を閉じる。

レノアに、果たして気持ちが通じるかーー……。

余裕そうにミネア様には微笑んで見せたけど、本当の本当は、不安な気持ちでいっぱいだった。
俺は口下手で、父さんがたくさんの人を幸せにしてきたような夢の言葉は使えないから……。
不安な気持ちを消すように、深呼吸してから語り掛けようと思った。

でもその時、俺の右手を暖かい温もりが包み込んだんだ。
驚いて目を開けて右隣を見ると、そこに居たのは一緒にここへ来てくれたジャナフ。ジャナフが俺の手を握って、隣に立ってくれていた。

大丈夫。
一緒に居るよーー。

俺と目が合ったジャナフは、心の中でそう呟いて、微笑って、頷いてくれた。
そしたら不思議と心が軽くなって、俺も微笑っていた。

そうだ、一人じゃない。
レノア、俺達は一人じゃないんだ。

ジャナフのお陰で、俺はレノアに伝えるべき言葉がようやくハッキリした。
また父さんみたいに、とか思ってたけど……違う。俺は、俺の言葉で気持ちを伝えようと思った。

正面を向くと、扉のその奥に居るレノアに届くように、俺は言った。

「俺は、立ち止まったりしない」

今のレノアに、俺がランの気持ちを代弁して伝えてもきっと届かない。
だから俺は、俺の気持ちを、真っ直ぐに伝える。

「俺は、真っ直ぐに進む。
この下剋上を成功させて、全てのバッジを手にして、お前を護る。約束を果たす」

それが今の俺に出来る精一杯。

俺の気持ちは、何があっても変わらないーー。

その気持ちを伝えよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

殿下、今日こそ帰ります!

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
彼女はある日、別人になって異世界で生きている事に気づいた。しかも、エミリアなどという名前で、養女ながらも男爵家令嬢などという御身分だ。迷惑極まりない。自分には仕事がある。早く帰らなければならないと焦る中、よりにもよって第一王子に見初められてしまった。彼にはすでに正妃になる女性が定まっていたが、妾をご所望だという。別に自分でなくても良いだろうと思ったが、言動を面白がられて、どんどん気に入られてしまう。「殿下、今日こそ帰ります!」と意気込む転生令嬢と、「そうか。分かったから……可愛がらせろ?」と、彼女への溺愛が止まらない王子の恋のお話。

僕が皇子?!~孤児だと思ったら行方不明の皇子で皇帝(兄)が度を超えるブラコンです~

びあ。
ファンタジー
身寄りのない孤児として近境地の領主の家で働いていたロイは、ある日王宮から迎えが来る。 そこへ待っていたのは、自分が兄だと言う皇帝。 なんと自分は7年前行方不明になった皇子だとか…。 だんだんと記憶を思い出すロイと、7年間の思いが積もり極度のブラコン化する兄弟の物語り。

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

幸せのかたち

春廼舎 明
恋愛
それは白く柔らかい二つの双丘、それはふわふわもこもこよちよち歩いてにゃーんと鳴く。 それは人それぞれで、形のない形っていうものもある。 仕事は楽しいと思っている。この業種でブラックでない企業なんて珍しい。 なのに、彼に誘われた。 「親が倒れたんだ。一緒に俺の故郷行かない?」 私はどう答える? ※Rのつかない範囲で幸せ朝チュンを目指します。 ※全5万文字程度の中編です。括りがないので長編としています。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

処理中です...