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第5章(3)ツバサside
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しおりを挟む何で、今の今まで気付けなかったんだろう。
ランの事で辛くて苦しんでいたのは、自分だけじゃない。
みんな、みんな……自分があの時こうしていれば、と悔やむんだ。
大切な人が悲しんでいる姿を見て、己のいけなかったと思う部分を探ってしまうんだ。
でも、違う。
誰も悪くない。
ジャナフのおかげで、俺は今そう、ハッキリと言える。だから、今度は俺が伝える。
「ランの事は、誰が悪い訳じゃないんだっ」
俺だって、今も思う。
俺が恐れずに、天使の能力をもっと早く受け入れていたら何かが変わっていたのか?、って……。
先見の能力を使えたら、運命を変える事が出来たんじゃないか、って……。
けど、もしも俺がランの立場なら、そんな風に思ってほしくない。
自分の事で、大切な人にいつまでも苦しんでほしくない。
自分の分も、強く、長く、生きてほしいーー。
「俺の傍に、居てくれよ……っ」
「っ、ツ、バサ……」
「これからもずっと……。俺と居て?ジャナフ」
一緒に、今生きてる人と幸せに生きてほしいーー。
俺はそう思うから、きっとランもそうだ、って思える。
本当のランは優しくて、自分の事よりも他の誰かの幸せを願える美しい心の持ち主だった。
だから、
ランは、誰も恨んでなんていないーー。
残された人達が、負の感情の連鎖で崩れていく姿なんて望んでないんだ。
俺が気持ちを伝えるように抱き締め続けていると、前に回していた手をジャナフがギュッと握ってくれた。
返事を言う代わりに、俺の手を取ってくれた。
その暖かい温もりにまた励まされて、俺は次の下剋上の前にやるべき事に気付く。
「……ジャナフ。
俺と一緒に、行ってほしい所があるんだ」
この気持ちを、伝えなくちゃいけない。
俺がランの気持ちを、想いを、今1番伝えなくちゃいけない相手がいた。
それは、ランの事で今誰よりも1番自分を責めている、レノア……。
……
…………。
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