片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
88 / 146
第5章(2)ツバサside

2-2

しおりを挟む

「でも、やっと、分かったんです。
大切な人の為に犠牲になるんじゃなくて、大切な人が笑顔になってくれる方法を、選ぶべきなんだ、って」

どうして人は、周りの気持ちには鈍感なのだろう?
自分だって、そんな事されたら嫌なのに……。なかなか気付く事が出来ない。

でも、俺は気付けた。
これ以上、大切な人の悲しい表情を見ない為に、自分がどうすればいいのか。だから……。

「だから、俺はこの盃は飲めません。
甘っちょろいと言われるのも、ルール違反だと言われるのも百も承知です。
けどっ……どうか、お願いしますッ!!」

カッコ悪くてもいいんだ。
だって、俺は俺なんだから……。
父さんのように天才じゃない。
勝負運が強い訳でも、実力が備わっている訳じゃない。

だから、諦めず、抗う事しか出来ないーー。

俺は椅子から立ち上がると、床に両膝と両手を着いて……頭を下げた。

「お願いします!何か別の勝負方法で、再戦をさせて下さい……!!」

毒を飲む訳にはいかない。
大切な人達を悲しませる訳にはいかない。
でも、この勝負に、負ける訳にもいかない。

「っ、お願いします!!お願いします!!お願いしますッ……!!」

俺は、何度も何度もお願いし続けた。
これが、今の自分に出来る精一杯の行動。

今を生きて、明日に繋げるんだ。
大切な人の笑顔を、これからも見る為に。
大切な人と、これからも未来を生きていく為にーー……。

すると、お願いし続ける俺の頭上から、再びミヅクさんの「あははははははっ……!!」と言う笑い声が聞こえた。

やっぱり、ダメなのかーー?

そう、思いかける。
しかし、それだけではない。
パンッ!パンッ!と、手を叩く音も聞こえて……俺はゆっくりと、顔を上げた。

その視線の先にあったのは……。
さっきの見下していた笑顔ではなく、満足そうな暖かい笑顔を浮かべたミヅクさんだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

処理中です...