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第5章(1)ツバサside
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しおりを挟む詳しい事情や背景は知らないが、ミヅクさんはとある研究施設からギャランさんが保護したと聞いている。
研究施設での扱いは相当酷いものだったらしく、そこから救い出してくれたギャランさんをミヅクさんは"オヤジ"と慕い……。ギャランさんが亡くなった今は、その息子さんである現最高責任者や孫のミライさん、ノゾミさんに絶対の忠誠を誓っているんだとか……。
本当は夢の配達人としての地位にも、白金バッジにも興味のないミヅクさんが今のままで在り続ける理由はたった一つ。
ギャランさんへの想いだけ、なんだ。
「ーー……よし。こっちにするねっ♪」
歌い終えてそう言ったミヅクさんは、片方の盃を手に取った。そのまま口元に運ばれていく盃。
けれど。
ミヅクさんは寸前で飲むのを止め、今までにない真剣な声色で告げる。
「……最期になるかも知れないから、一応言っておくね?
こんな素敵な舞台にボクを連れて来てくれて、ありがとう。夢の配達人の未来の為にこの身を捧げられるなんて、ボクにとって最高の幸せだよ。
だから……。この下剋上の結末がどんなものでも、後悔しないで?」
それが、まるで遺言のように聞こえたーー……。
「っ……!!」
悪い予感がする。
俺は咄嗟に椅子から立ち上がると、ミヅクさんの手を掴んで飲むのを止めようとした。
しかし。
すでに口元まで運ばれていた盃を止める事は出来ず、ミヅクさんは中身を口に含むと……ゴクッ、と音を立てて飲み込んだ。
……
…………そして。
「ーー……。
さぁ、残る盃は一つ。ツバたんの番だよ?」
盃を下に向けて飲み干した事を見せながら、首を少し傾けて、舌をペロリッと出して、笑った。
普段と変わらない表情。口調。態度。
目の前で笑うミヅクさんを見て心から安堵する。
が。
それは同時に、自らの負けを……示すものだった。
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