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第5章(1)ツバサside
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しおりを挟む緊張で乾いていた口の中に得た水分だが、味わう余裕なんて当然ある筈もない。口に入れた勢いのまま喉へと流し込んだ。
ーー……口の中にも、喉にも、胃にも違和感はない。
俺が飲んだのは、毒が入っていない盃だった。
「何ともなさそうだね?
ハズレを引けば猛毒だから、口に入れた瞬間から口内や舌に違和感を感じて飲み込む事なんて出来ない筈だよ?
ツバたん、まずは1回目はセーフ!だねっ♪」
そんな俺の様子を見てミヅクさんはそう言うと、「よし!次はボクの番だぁ~!」って嬉しそうに……いつもと変わらないテンションで盃を選ぶ。
そのはしゃぐ姿は、子供が大好きな遊びをしている時のようだった。
いや、まさにその通りなのだろう。
ミヅクさんにとって、毒を扱う事は何よりも楽しい事。
またその毒で命を落とす事になろうとも、きっと本望なのだ。
「じゃ、ボクはこのど真ん中のやつ貰うねっ!」
真っ直ぐ、ストレートに選んで、ミヅクさんは盃の水を飲み干した。
ごくっ、と喉を鳴らした後に、首を少し傾げて俺にウインクして微笑む姿からミヅクさんもセーフだった事が分かる。
残る盃は、あと3つーー。
毒の入っている盃を選んでしまう確率は三分の一。
ミヅクさんが最初の1杯目からハズレを引くとは思っていなくて、自分にもう一度順番が回ってくる事は予想していた。
が。さっきよりもより、恐怖や不安……色んな考えが頭の中に巡る。
けれど、ここで毒の入っていない盃を選ぶ事が出来れば残る盃は2つ。相手を、今の俺よりも追い込む事が出来る事が確かだった。
ここで退く訳にはいかない。
父さん、ラン。
俺に力を貸してくれーー……!!
俺は、向かって1番右端の盃を手に取ると口元に運んで飲み干した。
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