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第4章(3)ツバサside
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しおりを挟む「お~!もう来てたんだね?早い早い♪
お待たせ!そしてお久し振り!ツ~バたん!」
その声に振り返えった俺は、驚いた。何故なら、おそらく会うのは十年ぶり位だと言うのに、初めて会った時と全く変わらない姿がそこにあったからだ。
俺の記憶にあった、その姿と全く変わらない。
「お、お久し振りです。ミヅクさん」
何とか挨拶を返しながらも、目の前に来て無邪気に笑うミヅクさんの姿に俺は動揺を隠せなかった。
そんな俺に、ミヅクさんは続ける。
「昔、ヴァロン様に連れられたキミを見た時はまだ小さな子供だったのにねぇ~。すっかりおっきくなって~!月日が経つのは早い早い!」
そう言って、身体をパンパンと叩かれて、思わず「は、はあ」と苦笑いを溢す。
けど、次の瞬間。
「……でも、あの頃とはもう違うもんね?」
「!ーー……っ」
ゾクリッ、と俺の心が何かを感じて反応した。
ミヅクさんは、相変わらず微笑っている。
でも、雰囲気が一瞬で変わった。そして……。
「ボクとキミは今から敵同士、なんだ。
今の地位にも、白金バッジに興味も執着もないけど……最高責任者やミライきゅんに頼まれた以上、負ける訳にはいかない」
冷んやりとした汗が、流れるのが分かった。
ミヅクさんは穏やかな口調なのに、その言葉の中に明らかな威圧が込もっていた。
"腑抜けた心のままじゃ、ボクを倒せないよ?"ーー。
そう、言われている気がして……。俺は思わず、ゴクッと息を呑んだ。
"初めて会った時と変わらない"?
表面の見た目だけでそう思った自分を、心の底から馬鹿だと思った。
違う。全然、あの頃とは違う。
そして、今まで下剋上をしてもらった金バッジの人達とも。
一度下剋上で手合わせしてもらった、ミライさんとも、瞬空さんとも違う。
「今日はよろしく、ツバたん。
キミの力を、ボクに見せてよね?」
姿勢を正すと、ミヅクさんが俺に向かって右手を差し出した。
俺は、もう一度深呼吸して、その手を取って握り返す。
「よろしくお願いしますっ」
俺の返事を聞いてミヅクさんはニコッと微笑むと、手を離して用意されているテーブル席へと向かった。
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