68 / 146
第4章(2)ジャナフside
2-7
しおりを挟む「……。なんか、すごい子でしたね」
シンッと静まり返った弓道場。ミヅクさんが去って行った方をボー然と見つめていたボクは、思わずそう口にしていた。
第一印象は可愛い容姿に無邪気な雰囲気。
けど、的確な意見に鋭い洞察力。その上、力なんて全くなさそうな身体付きをしていながら弓を引き、遠くの的の中心を見事に貫いた。
そんな風に先程の光景を思い出していると、ノゾミさんが言った。
「ミヅクが帰って来た、と言う事は、近いうちに下剋上が行われますわね」
「!……え?」
下剋上ーー。
その言葉に、胸にドクンッと鼓動が響いた。
それと同時に、まさか、と思うと、それを察したようにノゾミさんが言葉を続ける。
「あの子は、「毒使いのミヅク」。夢の配達人で兄と瞬空と並ぶ、白金バッジの一人。
……ツバサ君の、次の下剋上の相手です」
「ーー……っ。
あの子が、ツバサの次の下剋上の……相手?」
毒使い。
白金バッジ。
ツバサの次の下剋上の相手。
その現実に驚きながらも、先程間近で身を持って感じたミヅクさんの大物感が自分の勘違いでなかった事が分かった。
「兄に呼ばれた、と言っていましたが、おそらく"そうしなければ、ミヅクが帰って来ない"と、兄が判断したからでしょう。
ミヅクは自由奔放で、他人の意見や夢の配達人の規則などあってないようなもの……。そんな中で、兄のミライには絶対の忠誠心を捧げていますから」
「っ、ミライさんがミヅクさんを……?」
ノゾミさんの言葉に、きっと疑問に思う事や突っ込むべき所はたくさんあった。
けど、何よりも先にボクの頭に浮かんだのは……。
ミライさんが、ミヅクさんを呼び寄せたーー。
なら、それは……。言い方を変えれば、ミライさんがツバサとミヅクさんの下剋上のタイミングを調整している、と言う事だ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる