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第3章(5)ツバサside
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しおりを挟むそんな事、俺には……っ。
出来ない、と思った。
けど、俯きかけたその瞬間。俺の頬に触れていたランの左手首に着けられている、桃色の石のブレスレットが瞳に映った。
すぐに分かる。
それは間違いなく、最後に会った日の夏祭りに俺がやった物。
「……ね、ツバサ。
可愛い姪っ子の頼み、聞いてくれる?」
あの夜の事を、鮮明に思い出す。
ランがあの時、言ってくれた言葉を……。
「絶対にレノアと幸せになってね!」
何も気付けず、自分の事ばかりだった俺に、ランはそう言ってくれた。
同時に、大好きな笑顔が広がる。
「それからね、もう一つ!
必ず、白金バッジの夢の配達人になって!」
……
…………そう。
それ、が……本物の、ランだった。
今目の前に居るのは、偽りの……作られた笑顔。本当のランの笑顔は、こんなんじゃない、って俺は気付いた。
そして。
本物のランは、レノアを傷付けたい、なんて微塵も想っていない事もーー……。
このまま俺が今の状態を見過ごしてしまえば、ランは間違いなくレノアを殺めてしまう。
そんな事は、絶対にさせてはならないと思った。
それが、俺がランにしてやれる……最後の事。
……俺は、頬に触れているランの左手に、自分の左手を重ねて、彼女と見つめ合った。
もう、ランはここには居ないーー……。
けど、俺はどうしても、伝えたかった。
「俺、絶対に白金バッジの夢の配達人になる。
絶対に……っ、絶対に、約束するからッ……。なっ?」
精一杯、微笑んだ。
ランの表情は、変わらなかった。
でも。
ポタポタと溢れる涙を見て、俺は目を閉じて……。天使の能力を、解放した。
ーー……ラン。
……、……ありがとう。
目を開けて、次に瞳と瞳を合わせたら……。
パァンッ!!って、何かが弾ける音がして……。
ーー……ドサッ。
ゆっくり目を閉じて……。
力無いランが、俺の腕の中に倒れ込んできた。
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