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第3章(4)ツバサside
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しおりを挟むその能力で、解る。
拳銃を撃ったのはレベッカさん。
そして、撃たれたのはランだ、と……。
目覚めたばかりの能力のせいか、細かい部分までは掴めないが、何故かランがレノアに向かってナイフを突き立て……それを止めようとしたレベッカさんが、ランを撃ったのだ。
レベッカさんはレノアの執事であり護衛役。主が襲われた、となれば、その敵に向かって銃を放つのは当たり前の事だ。
けど、問題は……。
俺が気になったのは、そこじゃない。
何故、ランがレノアをーー……?
そうなった理由が、経緯が、俺には全く分からなかった。
レノアがランに恨みを買う事はもちろん、ランがレノアを恨む事なんて考えられない。
俺はランを幼い頃から見てきた。ランは正義感と負けん気が強いけど、どんなにカッとなっても、暴力を振るったり、誰かを傷付けたりしない。
仮に、何らかの形で喧嘩になったとしても、こんな事態にはなり得ない筈なんだ。そう、絶対に、それだけはハッキリと言える。
……っ、出血……かなり酷いな。
辿っていた血痕を見ても、おそらく撃たれたランを抱き起こした際に手や衣服に付着したであろうライの血痕をみても……。ランは今、かなりの深傷を負い、出血が続いている筈だった。
細かい事は後だっ……。理由なんてどうでもいい。
今は、ランを見付けて早く手当てをしなくては……!!
一刻を争う状況だ。
ランを見付けられたら、手当てさえ出来れば、俺はまだこの状況をどうにか出来ると思っていたんだ。……けど。
ーー……あの部屋かっ?!
ランが飛び込んで行ったらしき部屋への扉を開け、中に足を踏み入れた瞬間。部屋全体を包む異様な空気に、俺の頭の中には色んな情報が流れ込んできた。
っ、これは…… spellbindーー?
そう。
この家に足を踏み入れた時から感じていた、妙な空気。それの正体は、かつて自分の祖父が人を強制的に従わせる為に使っていた能力ーspellbind。
何故かその能力を、俺はこの部屋から強く感じた。
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