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第3章(3)ツバサside
3-2
しおりを挟むザワッと急に騒ぎ出す胸中と同時に、周りの景色がいきなり白黒写真のような灰色の景色に変わっていた。
車内も、窓の外も、色を奪われた灰色の世界。まばらに居た筈の乗客も消えている。
まるで、オレだけ別世界の電車に乗っているかのようにーー……。
この光景を目にしてオレの頭に浮かぶのはただ一つ。
これは、古いシャルマ邸の書庫で天使と会った空間の雰囲気と同じだーー。
すると、またそう思ったと同時にオレの向かい合わせだった正面席に光りが集まり始め……。
なんと、そこに姿を現したのは……。
《……久し振りだね》
「!っ、お前は……ッ」
間違いない。
白金色の髪に瞳。司祭の白いローブのような服を身に纏った、シャルマ邸で会った天使だった。
オレは思わず座席を立ち上がって身構える。が、天使はそんな様子を見てくすくすと笑うと背もたれにもたれてダラけ、両手をオレに見せながら言った。
《別に、君に何か手を下そうと思って来た訳じゃない。
君の成長を見に来たのと……。"そろそろ"じゃないかなぁと思って、来てみたんだ》
「……そろそろ?」
《ああ。私が居る世界と、人間界の刻の流れ方は若干のズレがあるからな。
けど、やはり間違いはなかったようだ》
「っ、どう言う……」
《ーー良い具合に成長しているね》
「!!ッーー……」
ニヤリッと笑われ、身体全体に悪寒が走った。
天使の言葉に「どう言う意味だ?」と問いたかったのに、言葉が喉で止まる。
初めて天使に会ったあの日から多少の月日が過ぎて、自分もあの日よりは能力を受け入れて成長している筈なのに……。
まだ、天使には敵わないーー。
オレの全てが、そう言っているかのように震えていた。
けど、天使は言葉通りだ。座席から立つこともなく、オレに向かって手を伸ばす事もせず。ただ、話すだけ。
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