片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
28 / 149
第2章(1)ツバサside

1-3

しおりを挟む

『ふふっ、いいわね!』

「何が?」

『ジャナフ君と、相変わらず仲が良さそう。
クリスマスパーティー、遠慮しないでジャナフ君も来てくれていいのに』

「ああ。俺も誘ったんだけど、「せっかく幼馴染みで久々に集まるんでしょ?今回は遠慮する」ってさ」

『そっか。優しいね!』

「ああ。また別の機会に、会ってやって?」

『うんっ!勿論!』

そんな風に話して癒されながら、俺が隠れ家の広場まで来るとレノアが急に「あ!」と声を上げた。

「レノア?どうした?」

『ツバサ、今見たっ?』

「何を?」

『流れ星!今日は星が綺麗に見える日なのよ?』

「あ~……わり、俺今隠れ家だから地下なんだ」

そう言いながらも、レノアの言葉に思わず頭上を見上げてしまう。
目に映るのは隠れ家の上にあるカジノを隔てる床だが、そっと目を閉じると何だかレノアと同じ光景が見える気がした。

『そっかぁ、残念……』

「いいよ、レノアが見られたんなら。代わりにお願いしといて?」

『うん、分かった!何をお願いする?』

「そうだな~……。
"みんなと笑顔で会えますように"かな?」

『……ふふっ。もうすぐ叶うね!』

「ああ、楽しみだ」

みんなと笑顔で会えますようにーー。

その願いが叶うと、俺達は信じて疑わなかった。
星に願わなくても、当たり前のようにその日を迎えられる、って……信じていた。

『今年最後の下剋上、頑張ってね!』

「ああ。必ず成功させて会いに行くよ」


《未来を先見さきみ能力ちから、君はまだ目覚めていないようだね。
私には、この未来さきがすでに視えている。君はいずれ、今日契約を断った事を必ず後悔するよ》


天使の言葉なんてすっかり忘れて、"その時"が近付いているなんて……。俺は、思いもしなかった。

「じゃあ、おやすみ」

『うん!おやすみなさい』

眠る前の挨拶を交わして、ポケ電の通話ボタンを切った俺は……。次にまた、彼女の明るく元気な声を聴ける、って、思ってた。

……
…………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...