夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

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第19章 (2)ヴァロンside

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……
…………。

隠れ家を出て、帰路を歩いていると、街中はクリスマス用の装飾で鮮やかだった。
輝くネオンに、賑やかな人々。

リディアに引き取られた当初は、全てが灰色に見えた景色。
白金バッジになってからは……。よそ見する暇も無いくらい飛び回ってた。

今、その変わらない筈の景色が……。
自分の目には違って映る様になるなんて、な。


「……世界って、こんな綺麗だったんだ」

立ち止まって空を見上げると、真っ白い雪がちらちらと降り始める。
些細な事を”美しい”と思える、キラキラと輝く毎日。


Q.もしも、過去に戻れるとしたら、あなたは何がしたいですか?

さっき、アカリとやった商店街のアンケート。
俺が一番悩んだ項目だったけど、その答えはやっぱり変わらないな。


A.俺に会って今を、伝えたい。

お前には、将来優しい奥さんと可愛い子供が家族になってくれて。
大切な人や大好きな人がたくさん出来て、必ず心の底から幸せだって笑える日がくる。

だから、何も心配せず、そのままのお前でいていいよ。って……。

……。

「……さて、早く帰るか。
今夜はアカリ特製煮込みハンバーグだからな」

嫌いだった食事が大好きに変わった。
精神的ストレスから、何を食べても不味く感じたり、味がしなかった子供の頃。
飲食が苦痛で、俺にとってはどんな飲み物も無で…。そのうち水しか飲まなくなった。


「……今なら、美味しく飲めるかな?」

足を進めた先の店で、ノンアルコールのぶどうジュースを見付けて、俺は一本買ってみた。

また味がしなかったら、って……。
ずっと不安だった。

……けど。きっと、大丈夫。

アカリの笑顔が、絶対に美味しくしてくれるって思うんだ。

……
…………。


【夢の言葉と陽だまりの天使-終わり-】

次巻、「夢の言葉と失われた追想」に続く。
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