夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

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第19章 (2)ヴァロンside

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「出来れば、シュウにはこのまま黙ってて?
あいつ最近忙しそうだから、これ以上負担増やしたくねぇし」

シュウは俺には何も言わないけど……分かってる。
あいつはおそらく、そろそろ正式にマスターになる為に覚悟を決めてる。

……もう。俺の事で悩んだり、立ち止まったりしてほしくない。


「勿論、アカリ達にも言わないで。
もしもの時は、俺の口から伝えるから」

茶封筒の中身の、検査結果と再検査の書類をみながらそう言うと、ホノカさんは「はい」と震えた声で答えた。

俺が彼女を見ると、その表情はもう医師ではなくて……。俺自身を本当に想って答えてくれている事が分かる。
今にも泣き出しそうなホノカさんを見て、こんな優しい女性が大事な親友の妻だという事に、心から安心した。

この人が居れば、シュウは大丈夫だと……。


「そんな顔しないで?
まだ、どうにかなるって決まった訳じゃない。
再検査も受けるし、俺はこう見えても……ヤケになったりもしないから」

俺は信じられないくらいに、冷静だった。

……。

いや、違うな。
これが現実に起こっている事だって、自分が認めていないからかも知れない。
受け止めきれていないだけかも、知れない。


「やらなきゃいけない事とか、やりたい事、まだたくさんあるんだ。
思いっきり生きなきゃ、情けない生き方したら、リディアに会った時にボコられる」

それでも……。
家族の為に、大切な人の為に、投げやりな気持ちになりたくない。
取り乱して、格好悪く見られたくないっていう馬鹿みたいなプライドでもいい。

俺を、今まで通りに最期まで生かしてほしい。
白金バッジの夢の配達人として……。
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