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第18章 (3)アカリside
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しおりを挟む「泣くのがそんなにいけない事なら、私の方がたくさん謝らなきゃいけなくなっちゃう」
私がそうくすくす微笑いながら言うと、”確かに”って表情をしてヴァロンも微笑ってくれた。
子供の頃出逢った時は、最初怖い人なのかと思った。
でも、すぐに優しい人だと分かった。
”バロン”の姿で再会した時は、とにかく格好良くて……。王子様の様だった彼。
大人で、弱い部分を全く見せなくて、完璧や天才って言葉がピッタリだった。
確かに、私が惹かれて恋をしたのはそんなヴァロンだけど……。
今、私は躊躇なく言える。
全てをひっくるめて、今のヴァロンが1番大好きなの。
「私は、ヴァロンのどんな面を見ても大好き。
絶対に何度も恋をして、”その時”のヴァロンを好きになるよ」
「……。絶対、に?」
私の言葉に、ヴァロンは呟くように尋ねてくる。
その、私を見つめる彼の瞳は揺れていた。
いつもの自信に溢れた強い眼差しじゃなくて……。自分の質問に自信がなくて、返答を恐れている様だった。
「っ……わりぃ。
アカリの事、信用してねぇ……みたいだな。
ごめ……」
笑顔を作って、私の頭を撫でようとしたヴァロンの手を掴むと、私はその手の小指と自分の小指を結んで見つめた。
「絶対!絶対、ぜ~ったい!
約束するよ。ウソついたら、針千本飲ませていいから」
約束の指切り。
私の言葉と行動に、ヴァロンはようやく安心した様に微笑ってくれた。
……。
当たり前の毎日が、幸せが、怖い。
やっと自分に訪れた穏やかな日々に怯える彼。
この時に交わした約束を、私が果たす時は……。
そんなに遠い未来じゃなかった。
……
…………。
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