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第18章 (2)ヴァロンside
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しおりを挟む俺がユイを連れてきたのは、もう一つの”俺の家”だった。
「……ユイ。
その鍵で、この扉開けてみな?」
「!……えっ?
この鍵って、使えるんですか?」
決して大きくはないが、お洒落な一軒家。
その玄関の扉の前でユイが驚く。
きっと、ただのアクセサリーだと思ってたんだろうな。
俺が頷くと、ユイは恐る恐るネックレスの鍵を鍵穴に差し込み……。ゆっくりと回した。
カチャンッと響く、鍵が解除された音。
「!……開いた」
「中、入っていいぜ?」
俺が促すと、ユイは緊張した様子で扉を開けて中に足を踏み入れた。
少し進んで、不思議そうに見渡すユイに伝えた。
「……ここ。リディアと住んでた家なんだ」
「!……えっ?」
俺の言葉に目を見開いて呆然とするユイ。
俺は家の中をゆっくり進みながら言葉を続ける。
「リディアが売っ払った後、買い戻したんだよね。
……いつか、またここで会えるんじゃないかって。俺の、未練」
格好悪いと思いながらも、待っていた。
死んだなんて、いなくなったなんて思いたくなかった。
買い戻して、あの日グチャグチャにしてしまった家内を片付けて……。大切にしてきた空間。
……。
やっと、会えたな。
やっと、戻ってきてくれた。
大切な、娘という宝物と一緒に……。
「な、ユイ。
良かったら、この家使ってくれないか?」
「!……え?」
「この家に、住んでほしい。
きっと、リディアも喜ぶと思うんだ」
俺のお願いに、ユイは「でも……」と戸惑いながら鍵を握り締めていた。
……けれど。
その後ゆっくりと家の中を歩いて、俺に微笑んでくれる。
「……お言葉に甘えて。住まわせて頂きます!」
可愛いユイの笑顔に、微笑み返しながら……。俺は心の中で、呟いていた。
おかえりなさい、って。
……
…………。
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