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第18章 (1)ユイside
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しおりを挟む「ま、いっか。どれが気に入った?
なんなら全部……」
「や、やっぱり!止めます!
今日は、止めますっ……!!」
ヴァロンさんの言葉を遮って、試着した服を元の場所に返しに行く私。
実は、自分が想像していたよりもはるかに高かったこの店の服。
島を出る際に支度金を貰っているけど、決して裕福ではないのに私の為に貯金してくれていた先生達の気持ちや、この先の事を考えるととても使えない。
華やかで、物価も高い、未知の世界。
色んな意味でこの港街での生活を考え直そうと思っていると……。私の右手を、暖かい大きな手に握られた。
「!……ヴァロン、さん?」
「ちょっと来て」
そのまま手を引かれて連れて行かれたのは、再び試着室。
「んと、これと。これと……。
ん、……こっちだな!
ほいっ!これ着てみ?絶対、可愛いから」
呆然としている私に、ヴァロンさんは自分が選んできた服を自信満々に差し出す。
確かに、可愛い服。
丈の長い服に、丈の短い服を重ねて着たりするなんて……。今までの自分では考えつかなかった。
「着替えたら、今度は見せてくれよ?」
「!……え?……で、でも……っ」
また、似合わないかも知れない。
すっかり自信がなくなっていて、渡された服を見ながら戸惑っていると……。
「……ユイ」
「!っ……」
名前を呼ばれて、大好きな手が私の頭をポンポンッと優しく撫でてくれる。
顔を少し上げると、恥ずかしいのに重なった瞳を逸らせない。
「俺が見たいんだ。その服を着たユイ。
な?俺の我が儘に、付き合って?」
「……はい」
不思議。
ヴァロンさんの優しい綺麗な瞳に見つめられたら、寂しくなっていた心が暖かくなってきて、私は自然と素直に頷いていた。
大きな暖かい手は、私を幸せな女の子にしてくれる。
その優しく強い瞳と声は、いつも私に勇気をくれる。
リディア母さんの日記に書かれていた事。
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