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第18章 (1)ユイside
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【洋服屋】
「……どうしよう」
試着室に籠って、私は俯いた。
自分に似合う服なんて全然分からなくて、とりあえず可愛いと思う服を数着選んで試着室に入ったものの……。どれも自分には似合わない。
童顔で、背も低くて、胸も……ないし。
写真や雑誌で見たリディア母さんとは似ても似つかなくて、悲しくなる。
”夢を届ける妖精”って言葉がピッタリな美貌だった母。
「私は、本当に……二人の娘なのかな」
鏡に映る自分を見る度に、ずっとそう思ってきた。
幼い頃は、きっと年齢を重ねれば成長するのだと……。いつか、美しい両親の様になれるのだと思っていた。
……でも、駄目なんだ。
やっぱり私には、無理なんだ。
そう思ったら、急に生まれ育った島が懐かしくなってきて、私を育ててくれた先生と奥さんの顔が思い浮かぶ。
夢の配達人の傍で生きたい、と言った私を快く送り出してくれた育ての親。
ヴァロンさんに会いたい一心で飛び出してきてしまったが……。あのまま、一緒に診療所で働いて暮らす方が私には合っていたのかも知れない。
島を出る時は自分の選択に迷いはなかった筈なのに、早くも不安になってきて涙が出そう。
「っ……とりあえず、戻らなきゃ」
元の自分の服に着替えて、試着した服を持つと私は深呼吸してカーテンを開けた。
「すみません!お待たせしました!」
「……。あれ?
着替えた姿、見せてくれねぇの??」
試着室の前で待っていてくれたヴァロンさんに笑顔を作って元気に声を掛けると、首を傾げながら残念そうにそう言われた。
その言葉に、ズキッと痛む胸。
見せられる訳ないし。
服が可愛過ぎて、似合わないなんて言えない。
それに……。
「……どうしよう」
試着室に籠って、私は俯いた。
自分に似合う服なんて全然分からなくて、とりあえず可愛いと思う服を数着選んで試着室に入ったものの……。どれも自分には似合わない。
童顔で、背も低くて、胸も……ないし。
写真や雑誌で見たリディア母さんとは似ても似つかなくて、悲しくなる。
”夢を届ける妖精”って言葉がピッタリな美貌だった母。
「私は、本当に……二人の娘なのかな」
鏡に映る自分を見る度に、ずっとそう思ってきた。
幼い頃は、きっと年齢を重ねれば成長するのだと……。いつか、美しい両親の様になれるのだと思っていた。
……でも、駄目なんだ。
やっぱり私には、無理なんだ。
そう思ったら、急に生まれ育った島が懐かしくなってきて、私を育ててくれた先生と奥さんの顔が思い浮かぶ。
夢の配達人の傍で生きたい、と言った私を快く送り出してくれた育ての親。
ヴァロンさんに会いたい一心で飛び出してきてしまったが……。あのまま、一緒に診療所で働いて暮らす方が私には合っていたのかも知れない。
島を出る時は自分の選択に迷いはなかった筈なのに、早くも不安になってきて涙が出そう。
「っ……とりあえず、戻らなきゃ」
元の自分の服に着替えて、試着した服を持つと私は深呼吸してカーテンを開けた。
「すみません!お待たせしました!」
「……。あれ?
着替えた姿、見せてくれねぇの??」
試着室の前で待っていてくれたヴァロンさんに笑顔を作って元気に声を掛けると、首を傾げながら残念そうにそう言われた。
その言葉に、ズキッと痛む胸。
見せられる訳ないし。
服が可愛過ぎて、似合わないなんて言えない。
それに……。
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