夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
113 / 151
第17章 (2)ヴァロンside

2-3

しおりを挟む

シュウがあの日。
任務が終わって、俺が部屋を去った後に、アランに言われた事を……。
聞かされた事を、まだ知らなかった。

……
…………。


「……あ、そういやお前。俺になんか話があるんじゃなかったか?」

「……。
いえ、何でもありません」

俺の問い掛けにも、シュウは穏やかに笑顔で首を横に振ってくれた。
全ては俺の笑顔を、幸せを守る為に……。
裏で、必死に動いてくれていた。


「それよりも、今日の依頼人。ヴァロン、会ったら絶対に驚きますよ?」

食事が終わって、依頼人の待つ控え室へ向かう途中の廊下で意味深な事を言うシュウ。
自然に話題を変えられて、俺の興味はすっかりこれからの仕事の事になる。


「?……誰だよ?」

「会ってからのお楽しみです」

口元に立てた人差し指を当てて、秘密を隠す子供みたいに微笑っている。


「?……依頼内容は?」

「デートです」

「……。
……。……は?」

気になって尋ねた俺に返ってきた信じられないシュウの言葉に、思わず呆気に取られて立ち止まった。

こいつ、何言ってんだ?
と、背中を見つめていると……。振り返ったシュウが微笑んで、もう一度言う。


「デートですよ。
今日の依頼人は、ヴァロンとデートしたいそうです」

「……」

あんまりにも爽やかな表情で言われて、言葉を失う。

本気、か?
コイツ、本気で俺に仕事でデートしろって言ってんのか?

若くて若干チャラかった時は”恋人の代わりをしてほしい”とか、確かにそんな依頼を受けた事もある。
でも、ここ10年位は断ってきたし……。シュウだって俺が女関係の依頼は嫌々だって知っている筈だ。

……それに。
………。

俺の頭の中に浮かんだのは、アカリ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

殿下はご存じないのでしょうか?

7
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 学園の卒業パーティーに、突如婚約破棄を言い渡されてしまった公爵令嬢、イディア・ディエンバラ。 婚約破棄の理由を聞くと、他に愛する女性ができたという。 その女性がどなたか尋ねると、第二殿下はある女性に愛の告白をする。 殿下はご存じないのでしょうか? その方は――。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

【完結保証】好きでもないなら婚約者のフリはやめてください

ネコ
恋愛
侯爵令嬢の私と伯爵令息ルイは子供の頃から婚約していた。 だが成人式直前、ルイは「本当は君を好きになれなかった」と告白。 さらに「他に愛している相手がいる」と勝手に破棄を宣言する。 誠意も何も感じられない嘘まみれの婚約に縛られていたなんて、こっちこそ御免被る。 失恋の痛みを振り払って新たな道を歩む私に、なぜかルイは焦り始めるが……今さら何を言われても心はもう戻らない。

【完結】婚約破棄からの絆

岡崎 剛柔
恋愛
 アデリーナ=ヴァレンティーナ公爵令嬢は、王太子アルベールとの婚約者だった。  しかし、彼女には王太子の傍にはいつも可愛がる従妹のリリアがいた。  アデリーナは王太子との絆を深める一方で、従妹リリアとも強い絆を築いていた。  ある日、アデリーナは王太子から呼び出され、彼から婚約破棄を告げられる。  彼の隣にはリリアがおり、次の婚約者はリリアになると言われる。  驚きと絶望に包まれながらも、アデリーナは微笑みを絶やさずに二人の幸せを願い、従者とともに部屋を後にする。  しかし、アデリーナは勘当されるのではないか、他の貴族の後妻にされるのではないかと不安に駆られる。  婚約破棄の話は進まず、代わりに王太子から再び呼び出される。  彼との再会で、アデリーナは彼の真意を知る。  アデリーナの心は揺れ動く中、リリアが彼女を支える存在として姿を現す。  彼女の勇気と言葉に励まされ、アデリーナは再び自らの意志を取り戻し、立ち上がる覚悟を固める。  そして――。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

義妹が私に毒を盛ったので、飲んだふりをして周りの反応を見て見る事にしました

新野乃花(大舟)
恋愛
義姉であるラナーと義妹であるレベッカは、ラナーの婚約者であるロッドを隔ててぎくしゃくとした関係にあった。というのも、義妹であるレベッカが一方的にラナーの事を敵対視し、関係を悪化させていたのだ。ある日、ラナーの事が気に入らないレベッカは、ラナーに渡すワインの中にちょっとした仕掛けを施した…。その結果、2人を巻き込む関係は思わぬ方向に進んでいくこととなるのだった…。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

処理中です...