夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
102 / 151
第16章 (3)ヴァロンside

3-4

しおりを挟む

「い、嫌じゃない……けど。
ば、場所が……恥ずかしい、時は?」

「!……。……。はい?」

「……い、今はダメ、だけど……。
よ、夜……なら、いいよ……っ」

顔だけ振り返った俺の瞳に映るのは、恥ずかしがりながらも必死に自分の気持ちを伝えてくれるアカリ。


「ご、ご飯っ!ご飯、作ろうっ?」

俺の服を放して、照れ隠しする様に自分の調理の続きをするアカリ。
ワザとらしく「ここにコレを入れて~」とか、普段料理中あんな事言わないのに……。明らかに動揺してる。


……全く、何でこんなに可愛いかな。

愛おしいとか、溺愛って言葉の意味を教えてくれたのは……。間違いなく彼女だった。


「……アカリ、ありがとね」

「?……ヴァロン?」

突然お礼を言われて首を傾げるアカリを、俺は背中から抱き締めた。


あの時……。
アルバート様からの依頼を受けなかったら、こんなに幸せで満ちた日々はなかった。
そう思うと、怖くなる。


……けど。
あん時、そういやシュウは躊躇なく俺にアカリの花嫁修業の依頼を勧めてきたな。
て、事は……。あれは俺への指名依頼、だったのか?
ギルの父親からの依頼ってのに気を取られて、今まで気にしなかったけど……。
普通に考えたら、シュウが俺に勧めてくる依頼内容ではない筈だ。

つまり。
アルバート様が俺を指名していた、って事か。
あの人が俺とアカリを最終的に結び付けてくれた……。


「ヴァロン、お料理作れないよ」

抱き締めたまま考え込んでいた俺に、アカリがくすくす笑いながら言う。
その様子は満更でもなさそうだが、俺は彼女を解放して微笑む。


「あ、わり……。ちゃっちゃと作るか!」

「うん!」

……。

今までの自分になかった幸せに、完全に目が眩んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

お飾り王妃は愛されたい

神崎葵
恋愛
誰も愛せないはずの男のもとに嫁いだはずなのに、彼は愛を得た。 私とは違う人との間に。 愛されたいと願ったお飾り王妃は自らの人生に終止符を打ち――次の瞬間、嫁ぐ直前で目を覚ました。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

【完結】貴族の矜持

仲村 嘉高
恋愛
「貴族がそんなに偉いんですか!?」 元平民の男爵令嬢が言った。 「えぇ、偉いですわよ」 公爵令嬢が答える。 「そんなところが嫌なんだ!いつでも上から物を言う!地位しか誇るものが無いからだ!」 公爵令嬢の婚約者の侯爵家三男が言う。 「わかりました。では、その地位がどういうものか身をもって知るが良いですわ」 そんなお話。 HOTで最高5位まで行きました。 初めての経験で、テンション上がりまくりました(*≧∀≦*) ありがとうございます!

【完結】あなたにすべて差し上げます

野村にれ
恋愛
コンクラート王国。王宮には国王と、二人の王女がいた。 王太子の第一王女・アウラージュと、第二王女・シュアリー。 しかし、アウラージュはシュアリーに王配になるはずだった婚約者を奪われることになった。 女王になるべくして育てられた第一王女は、今までの努力をあっさりと手放し、 すべてを清算して、いなくなってしまった。 残されたのは国王と、第二王女と婚約者。これからどうするのか。

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

やり直し悪女は転生者のヒロインと敵対する

光子
恋愛
ああ、どうしてこんなことになってしまったんだろう…… 断頭台を登る足が震える。こんなところで死にたくないと、心の中で叫んでいる。 「《シルラ》、君は皇妃に相応しくない! その罪を悔い、死で償え!」 私に無情にも死を告げるのは、私の夫である《キッサリナ帝国》の皇帝陛下 《グラレゴン》で、その隣にいるのは、私の代わりに皇妃の座に収まった、《美里(みさと)》と呼ばれる、異世界から来た転生者だった。 「さようならシルラ、また、来世で会えたら会いましょうね。その時には、仲良くしてくれたら嬉しいな!」 純粋無垢な笑顔を浮かべ、私にお別れを告げる美里。 今の人生、後悔しかない。 もしやり直せるなら……今度こそ間違えない! 私は、私を大切に思う人達と、自分の幸せのために生きる! だから、お願いです女神様、私の人生、もう一度やり直させて……! 転生者という、未来が分かる美里に対抗して、抗ってみせるから! 幸せになってみせるから! 大切な人を、今度こそ間違えたりしないから! 私の一度目の人生は幕を閉じ―――― ――――次に目を覚ました時には、私は生家の自分の部屋にいた。女神様の気まぐれか、女神様は、私の願いを叶えて下さったのだ。 不定期更新。 この作品は私の考えた世界の話です。魔物もいます。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

処理中です...