夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
101 / 151
第16章 (3)ヴァロンside

3-3

しおりを挟む
【厨房】

ヒナタをローザ殿達に預けて、俺とアカリは二人で料理を作る事にした。
俺が材料の下拵えをしていると、アカリが手を止めてじっと見つめてくる。


「?……どした?」

「あ、ううん!
すごいなぁ、って思って」

俺のする事する事をまじまじと見ながら、何やら小さいノートに書き込んでいる。
勉強熱心というか、料理好きというか……。
その真面目な様子に思わず笑ってしまう。


「別に、俺はプロじゃねぇし。
アカリの方が料理は上手いんだからメモらなくて良くね?」

「……そ、そんな事ないもん。
た、玉子焼き……ヴァロンの方が美味しかった」

むぅ……っと、拗ねた様に呟きながら彼女は再び包丁を手に野菜を切り始めた。
分かりやすくて、素直で、本当に可愛い。


「……アカリ。
これ、ちょっと味見してみて?」

拗ねている機嫌を直したくて、俺はスパゲティーのソース用に味付けして煮たトマトをスプーンですくうと、彼女の口元に差し出した。


「えっ?あ、うん。
!っ……何コレ!すごく美味しい!」

条件反射でぱくっとソースを口にしたアカリは、驚いた直後に満面の笑みをこぼす。


……うん。
やっぱり、彼女には笑顔が一番似合う。

可愛くて、可愛くて仕方ない。


「……俺にも、味見させて?」

「えっ?……ッ」

俺は壁際に立っていたアカリを追いやると、唇を奪っていた。
口内に舌を滑り込ませてじっくり味わい、唇を舐めて間近で見つめる。


「……本当だ。美味いね」

「っ~~……ヴァ、ヴァロンのエッチ」

俺の意地悪な行動に、壁に背中をくっ付けた彼女が、顔を真っ赤にしてまた拗ねてしまう。


「……そんな可愛い顔、絶対他の男の前ですんなよ?」

「っ……ん、ッ……ン」

アカリの姿に堪らなくなって、俺は再び口付けると強引に舌を絡め取りながら、自分の身体を密着させて自由を奪った。

昨夜もあんなに抱いたのに、足りない。
今日は彼女を喜ばせる為に努めようと思ってたのに……。


「……っ、……わりッ」

そのまま身体を弄ろうとした手を何とか思い止まらせて、俺はアカリの両肩を持つとグイッと離して俯いた。
彼女を前にすると、本当に歯止めが効かなくなる。


「い、嫌な時は……殴っていいから……。
殴ってでも、噛み付いてでも抵抗してくれ……。じゃねぇと、俺……抑えらんねぇから」

手で口元を押さえながら、フイッと背を向けて調理に戻ろうとすると……。
アカリが俺の服の袖を引いて止めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。 社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。 対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。 それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。 けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。 …ある大事件が起きるまで。 姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。 両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。 姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。 しかしその少女は噂のような悪女ではなく… *** タイトルを変更しました。 指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。

【完結】完璧な淑女を求められても無理です

白草まる
恋愛
ルトリシアはアイヒホルン公爵家の令嬢として恥ずかしくないよう、母親から厳しく教育された。 完璧な淑女として振る舞うことができるようになったルトリシアはスヴェンと婚約を結び、婚約を祝うための食事会が開かれた。 しかし両家の関係は悪く、婚約を祝う食事会で夫人たちが口論してしまう。 どれだけ完璧な淑女として振る舞おうが親がこれではどうにもならない。 しかもスヴェンもまたルトリシアの努力を認めないような問題のある性格だった。 この婚約関係の先に良い未来があるとは思えないルトリシアだった。

後悔はなんだった?

木嶋うめ香
恋愛
目が覚めたら私は、妙な懐かしさを感じる部屋にいた。 「お嬢様、目を覚まされたのですねっ!」 怠い体を起こそうとしたのに力が上手く入らない。 何とか顔を動かそうとした瞬間、大きな声が部屋に響いた。 お嬢様? 私がそう呼ばれていたのは、遥か昔の筈。 結婚前、スフィール侯爵令嬢と呼ばれていた頃だ。 私はスフィール侯爵の長女として生まれ、亡くなった兄の代わりに婿をとりスフィール侯爵夫人となった。 その筈なのにどうしてあなたは私をお嬢様と呼ぶの? 疑問に感じながら、声の主を見ればそれは記憶よりもだいぶ若い侍女だった。 主人公三歳から始まりますので、恋愛話になるまで少し時間があります。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する

真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください

ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。 ※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。 隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。 そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。 ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。

処理中です...