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第16章 (2)アカリside
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しおりを挟む「ホ、ホントに……いいの?
これからは写真、撮っても……いいの?」
「ああ。……その代わり、上手く笑えなくても怒んなよ?
慣れてねぇから、ちょっと時間かかるかも」
念の為にもう一度おずおずと尋ねる私に、ヴァロンはそう答えると……。私の手を引いてベッドに座らせて、腕にヒナタを抱かせると、自分もその隣に腰掛け、自撮りするようにカメラを構えた。
「こんな感じでみんな写ってんのかな?
……ま、いいや。撮ろうぜ。ちゃんと笑えよ~」
「!……えっ?いきなり?
ちょ、ちょっと待っ……」
突然の展開に戸惑う私をよそに、ヴァロンはカシャッとシャッターを切った。
……。
あっという間の出来事で、せっかく初めての家族写真なのに絶対に上手く笑えなかった。
「も、もうっ!
いきなり撮るから、絶対に変な顔してるよ~」
「んな事ねぇよ。
アカリは普段から可愛いじゃん」
「っ……」
拗ねる私に、サラッと嬉しい言葉を言ってくれるヴァロン。
いつの間にか、穏やかになる気持ち。
ヴァロンの優しい言葉は、本当に魔法の呪文。
彼が居るだけで、その場が和んで心が暖かくなる。
……こんなに優しい人を、何で貴方達は手放してしまったんですか?
ヴァロンを知れば知る程、疑問しか浮かばない。彼の両親が、彼を棄てたという事。
「……。ねぇ……。
ヴァロンの、お父さんとお母さんって……どんな人だったの?」
私は勇気を出して、ずっと聞きたかった事を口にした。今聞かなかったら、またずるずると先延ばしになって聞けない気がして……。
間隣りに居るヴァロンの横顔を見つめた。
すると、カメラをいじっていた彼の手が止まって……。そのまま黙り込んでしまう。
やっぱり、触れてほしくない事だったんだろうか。と、気不味い沈黙に少し後悔した私を察する様に、ヒナタが手を伸ばしてヴァロンの服の袖をギュッと握った。
その行動にヴァロンはヒナタを見てフッと微笑むと、呟くように言う。
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