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第16章 (2)アカリside
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しおりを挟む家族で迎えた初めての朝。
目が覚めるやいなや、ヴァロンはもうヒナタにべったり。
朝ご飯をすませて、私がいつもの様に日記を付けていると、二人はベッドの上で戯れている。
遊びと言ってもまだヒナタはたいした事は何も出来ないけど、ヴァロンは些細な仕草や行動が嬉しいみたいでとっても楽しそうだ。
……すごい、二人共可愛い笑顔。
その様子に目を奪われて、私は日記を書く手を止めてペンを置くと、机の上に置いてあったカメラを手に二人に近付いてシャッターを切った。
「!ッ……」
すると、その直後にビクッと反応したヴァロンがとても驚いた表情で私を見る。
良い写真が撮れたと満足していた私は、その視線に気付いてハッと我に返った。
私の目に映るのは、戸惑った様に固まっているヴァロン。
「あ……。や、やだ!
私、つい……ごめっ……ッ」
”写真を撮られるのが嫌い”……。
それは夫婦になった当初から、結婚式の時から言われていた事だった。
だから、結婚式の写真も……。
今までヴァロンと一緒に写ってる写真なんて、一枚もない。
本当はずっと一緒に撮りたかったけど、彼が嫌だと思う事を強制したくなかった。
それなのに、つい……。
「……いいよ。撮ろう?」
カメラを握り締めて、今にも泣き出しそうに俯いていた私に、ヴァロンが言った。
その優しい言葉に顔を上げて見ると、歩み寄ってきた彼が穏やかに微笑んで私の頭をポンポンッと撫でてくれる。
「これからは、撮ろう。
ヒナタが大きくなった時、一緒に写ってる写真がなかったら……かわいそうだもんな」
そう言って私の手からカメラを取ると、彼は沈んだままの私に向かってカメラを構えた。
「……ホラ!
そんな表情してないで微笑って下さ~い?
俺はアカリの笑顔が、一番大好きなんです」
明るい声で、少しふざけた口調で私を励ましてくれる。
その優しさが嬉しくて、余計に涙が出そうになるのを私は堪えた。
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