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第16章 (1)ヴァロンside
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しおりを挟む「っ……。アカリ、ごめ……」
「じゃあ、次!……ヴァロンの番!」
「!……。は、い……?」
考えを改めて謝ろうとした俺を、涙を拭きながらアカリが見つめる。
「今、私言いたい事……ちゃんと言った。
だから、次はヴァロンが素直な気持ちを言う番だよ」
謝罪の言葉を遮られて、呆気にとられる俺にアカリがそう言葉を続けた。
「……ヴァロンは、優しい。
っ……優しい。けど、バカだよっ……。
……。そんなトコも、好きだけどッ。
っ……もっと、ヴァロンの本音を聴かせてよ!」
真っ直ぐな彼女の言葉に、俺は本当に馬鹿だって思った。
アカリに嘘なんて付ける訳ないのに、この世で一番嘘を付いちゃいけない相手なのに……。
嫌われる事を恐れて、格好付けて大人のフリしてた。
そんな俺の行動の方が、彼女を信じてなくて、傷付けるだけだったのに……。
「……私達、夫婦でしょ?家族でしょ?
もっと、素直に……甘えてよ」
アカリが俺の手を握って、見上げて、優しく微笑んでくれた。
その笑顔に、溶かされる。
俺の歪んだ気持ちも、汚い醜い想いも……全部。
本当に、彼女には敵わない。
「……アカリ。
俺、アカリを抱きたい」
揺れた、乱れた心は落ち着いて……。
純粋に彼女に触れたいと、心が愛で溢れてた。
アカリの肩に額をコツンとつけて甘えると、彼女がそっと俺を抱き締めてくれる。
まるで真っ白な暖かい羽根に包まれている様な、感覚。
「……私も、ヴァロンに触れたい。
好きな人と一緒に居て、そういう気持ちになるのは……男の人だけじゃないんだから!」
そう、照れながら言って。
アカリは俺の両頬に手を添えると、自ら唇を重ねてくれた。
俺を暗闇に迷わせず、導いてくれる明かり。
彼女が一緒にいてくれたら、きっとどんな困難も乗り越えられる。
俺は、そう思っていた。
……
…………。
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