夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

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第16章 (1)ヴァロンside

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「……っ。
ごめん。ちょっと、寝付けなくて……」

「嘘、付かないでよっ……」

誤魔化そうと口を開いた俺の言葉を、アカリが遮るように言った。
キッと強い眼差しで見上げられてドキッとする。


「……契約先の令嬢様とは一晩同じ部屋で過ごすクセに、私とはもう一緒に寝てもくれないの?」

「!……えっ?」

スッと俺から離れて背を向けるアカリ。
その様子に俺は慌てて首を横に振った。


「ち、違うッ……。
あ、あれはチェスしてただけだって……!」

「……」

本当の話。
確かに言い寄られて迫られたが、キスも、勿論それ以上もしていない。する訳がない。

こんなにアカリでいっぱいの気持ちで、いくら仕事だからって他の女に触れたりしない。


「あんなデタラメな記事、信じないでくれよっ!」

「分かってるよそんな事ッ……!」

信じてもらえないのかと寂しくなった俺に、アカリは振り返るとずいっと詰め寄ってきた。


「分かってるよ……っ。
でも、っ……嫌だったんだもんッ!」

「!……えっ?」

「何もなくてもっ……。仕事だって分かっててもっ……。嫌だったんだから、仕方ないじゃないッ」

涙をいっぱい溜めた潤んだ瞳で、怒った様に見上げられて戸惑う俺の胸を、アカリが拳を作ってドンッと叩く。


「っ……ヴァロンは私の旦那様でしょ?
嫌なのっ……。他の女の人と一緒に居たのもっ……、結婚指輪してないの見た時だって……。辛かったんだから……ッ」

「!……ぁ、……っ」

”嫌だった”、”辛かった”……。
そのアカリの素直な叫びに、俺は何も言えなくなった。

”信じてほしい”なんて、そんな問題じゃなかった。
何もなかったから、いいって訳じゃ……ない。
現に、アカリが泣いてる。
俺のしてきた行動で、泣いてるじゃないか……。
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