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第15章 (2)スズカside
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【アラン邸/マオの部屋】
いつものようにお掃除をしていると、部屋の扉がガチャッと開いた。
目を向けると、そこに立っていたのは……。
「!……マオ様。
あ、申し訳ございません!まだお掃除の途中で……」
今朝お仕事からこの屋敷に戻られて早々、アラン様の部屋に直行されたマオ様。
急なお戻りだったのできっと仕事の報告があるのだろうと思い、その間にくつろげる空間を用意しようと思っていたのに……。
相変わらず愚図な私の行動は間に合わなかったようだ。
「あ、いいんです。
……今日は、スズカさんにお話があります」
そう言ってマオ様は部屋に入って扉を閉めると、頭を下げていた私の前に歩んで来て足を止めた。
私にお話?と、ゆっくり顔を上げると……。
マオ様の綺麗な瞳と私の瞳が重なった。
すると一呼吸置いて、マオ様が口を開く。
「……僕は。アラン様の親戚でも、”マオ”という名前でもありません」
静かな部屋に、彼の柔らかい声が響いて聴こえる。
その告白に、時が止まった様に私はただマオ様を見つめていた。
「訳あって、暫くアラン様のお仕事を手伝う事になり……。ここへ、来ました。」
私を見つめる真っ直ぐな瞳に、嘘偽りないのだと……。初めて、この方に会った日の夜の気持ちを思い出す。
「今まで、黙っていて……。
本当にすみませんでしたっ」
黙って話を聞いている私に、頭を下げる彼。
私はその姿に焦りや怒りを感じるどころか、堪らない愛おしさを……感じる。
「……それから、ありがとう。
あの時、勇気を出して告白してくれたのに……。君は、困った僕を見てとっさに話題を変えてくれた」
それは、あの夜の事。
私が自分の気持ちを抑え切れなくなって、マオ様に”好き”と言ってしまった……。
あの時の事……。
いつものようにお掃除をしていると、部屋の扉がガチャッと開いた。
目を向けると、そこに立っていたのは……。
「!……マオ様。
あ、申し訳ございません!まだお掃除の途中で……」
今朝お仕事からこの屋敷に戻られて早々、アラン様の部屋に直行されたマオ様。
急なお戻りだったのできっと仕事の報告があるのだろうと思い、その間にくつろげる空間を用意しようと思っていたのに……。
相変わらず愚図な私の行動は間に合わなかったようだ。
「あ、いいんです。
……今日は、スズカさんにお話があります」
そう言ってマオ様は部屋に入って扉を閉めると、頭を下げていた私の前に歩んで来て足を止めた。
私にお話?と、ゆっくり顔を上げると……。
マオ様の綺麗な瞳と私の瞳が重なった。
すると一呼吸置いて、マオ様が口を開く。
「……僕は。アラン様の親戚でも、”マオ”という名前でもありません」
静かな部屋に、彼の柔らかい声が響いて聴こえる。
その告白に、時が止まった様に私はただマオ様を見つめていた。
「訳あって、暫くアラン様のお仕事を手伝う事になり……。ここへ、来ました。」
私を見つめる真っ直ぐな瞳に、嘘偽りないのだと……。初めて、この方に会った日の夜の気持ちを思い出す。
「今まで、黙っていて……。
本当にすみませんでしたっ」
黙って話を聞いている私に、頭を下げる彼。
私はその姿に焦りや怒りを感じるどころか、堪らない愛おしさを……感じる。
「……それから、ありがとう。
あの時、勇気を出して告白してくれたのに……。君は、困った僕を見てとっさに話題を変えてくれた」
それは、あの夜の事。
私が自分の気持ちを抑え切れなくなって、マオ様に”好き”と言ってしまった……。
あの時の事……。
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