夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

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第15章 (1)ヴァロンside

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【二ヶ月後/アラン邸】

「ロイス様との契約。
昨日、無事に成立致しました」

赤や茶の葉が舞い散る秋。
俺はアランの依頼通り、ロイス様との契約を成立させた。

ロイス様の会社から帰宅してアランの部屋を訪れると、契約時の状況を報告しながら机の上に書類の入った茶封筒を置く。


「……まさか。
本当にやってしまうとは、な」

机に置かれた茶封筒から書類を出して眺めながら、アランは口を開く。
その態度は見るからに契約が成立したのに面白くなさそうで、俺の任務成功を喜んではいなかった。


「驚いたよ。
正直、予想以上だった」

「……。
勿体無いお言葉です」

軽く頭を下げるとアランは座っていた椅子から立ち上がり、俺の正面に立って言葉を続ける。


「このまま、私の下で働かないか?」

「……」

俺が顔を上げて視線が合うと、アランはフッと笑った。
何となく、予想していた質問にたいして驚かなかった。

奴は俺が嫌いだ。
……けど。
どんなに嫌いな相手だろうが、利益の為ならば自分のものにする。
そういう男だと、この一年以上共にした時間で充分過ぎる程分かっていた。

俺の返事は決まっている。


「折角のお誘いですが、辞退させて頂きます」

しかし、仮にも依頼人。
俺は出来るだけ丁寧な言葉で断りの言葉を返す。


「私の本職はここにはありません」

「……私が、簡単に手放すと思うか?」

「……。
では……。契約を、破るつもりですか?」

「……」

視線を合わせたまま、しばし沈黙の時が流れた。

依頼人と揉め事は起こしたくない。
そう思い、俺は奴と働いた時間を思い出しながら話し始めた。
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