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第15章 (1)ヴァロンside
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【二ヶ月後/アラン邸】
「ロイス様との契約。
昨日、無事に成立致しました」
赤や茶の葉が舞い散る秋。
俺はアランの依頼通り、ロイス様との契約を成立させた。
ロイス様の会社から帰宅してアランの部屋を訪れると、契約時の状況を報告しながら机の上に書類の入った茶封筒を置く。
「……まさか。
本当にやってしまうとは、な」
机に置かれた茶封筒から書類を出して眺めながら、アランは口を開く。
その態度は見るからに契約が成立したのに面白くなさそうで、俺の任務成功を喜んではいなかった。
「驚いたよ。
正直、予想以上だった」
「……。
勿体無いお言葉です」
軽く頭を下げるとアランは座っていた椅子から立ち上がり、俺の正面に立って言葉を続ける。
「このまま、私の下で働かないか?」
「……」
俺が顔を上げて視線が合うと、アランはフッと笑った。
何となく、予想していた質問にたいして驚かなかった。
奴は俺が嫌いだ。
……けど。
どんなに嫌いな相手だろうが、利益の為ならば自分のものにする。
そういう男だと、この一年以上共にした時間で充分過ぎる程分かっていた。
俺の返事は決まっている。
「折角のお誘いですが、辞退させて頂きます」
しかし、仮にも依頼人。
俺は出来るだけ丁寧な言葉で断りの言葉を返す。
「私の本職はここにはありません」
「……私が、簡単に手放すと思うか?」
「……。
では……。契約を、破るつもりですか?」
「……」
視線を合わせたまま、しばし沈黙の時が流れた。
依頼人と揉め事は起こしたくない。
そう思い、俺は奴と働いた時間を思い出しながら話し始めた。
「ロイス様との契約。
昨日、無事に成立致しました」
赤や茶の葉が舞い散る秋。
俺はアランの依頼通り、ロイス様との契約を成立させた。
ロイス様の会社から帰宅してアランの部屋を訪れると、契約時の状況を報告しながら机の上に書類の入った茶封筒を置く。
「……まさか。
本当にやってしまうとは、な」
机に置かれた茶封筒から書類を出して眺めながら、アランは口を開く。
その態度は見るからに契約が成立したのに面白くなさそうで、俺の任務成功を喜んではいなかった。
「驚いたよ。
正直、予想以上だった」
「……。
勿体無いお言葉です」
軽く頭を下げるとアランは座っていた椅子から立ち上がり、俺の正面に立って言葉を続ける。
「このまま、私の下で働かないか?」
「……」
俺が顔を上げて視線が合うと、アランはフッと笑った。
何となく、予想していた質問にたいして驚かなかった。
奴は俺が嫌いだ。
……けど。
どんなに嫌いな相手だろうが、利益の為ならば自分のものにする。
そういう男だと、この一年以上共にした時間で充分過ぎる程分かっていた。
俺の返事は決まっている。
「折角のお誘いですが、辞退させて頂きます」
しかし、仮にも依頼人。
俺は出来るだけ丁寧な言葉で断りの言葉を返す。
「私の本職はここにはありません」
「……私が、簡単に手放すと思うか?」
「……。
では……。契約を、破るつもりですか?」
「……」
視線を合わせたまま、しばし沈黙の時が流れた。
依頼人と揉め事は起こしたくない。
そう思い、俺は奴と働いた時間を思い出しながら話し始めた。
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