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第14章 (1)ユイside
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しおりを挟む私達の間に流れた気不味い沈黙。
思わず叫んでしまった自分の気持ちに動揺した私は、とっさに嘘をついた。
『っ……しゅ、手芸!手芸、大好きなんです!
だから、マオ様とぬいぐるみ……。これからも、作りたいですっ』
……。
そう言った私を、マオ様は「はい」って短く答えながら頷いてくれて……。
今日まで変わらず、私に接してくれた。
もう、なかった事にされたと思っていた。
……のに、……。
「好きになってくれて、ありがとう。
……けど、ごめん。
俺の心の中にいるのは、君じゃないんだ」
私の大切な初恋を……。
人生で初めての告白に、正面から答えてくれた。
「待っててくれてる人がいる。
俺はもう……彼女以外、愛せない」
顔を上げてそう言った彼の愛に溢れた美しい瞳は、私の父と同じ瞳だった。
”他人に流されてフラフラする男は最低だ。
そんなのは優しさじゃない。
自分の意志を貫ける男を選びなさい。”……。
そう私に教えてくれた大好きな父は、母と私達家族をとても愛して大切にしてくれた。
私がマオ様に惹かれた理由が、分かった。
”一途に愛しい人を想う心”が、彼をこんなに輝かせているからだ。
「……分かって、いました」
「!……え?」
「マオ様が、ぬいぐるみを見つめる瞳を見た時に……。なんとなく、分かっていました」
マオ様に見つめられるぬいぐるみを見た時に、私は”羨ましい”と感じた。
それは、愛しい人を思い浮かべてぬいぐるみに心を込めて作り上げていく、彼の強い気持ちが伝わってきたから……。
「……一つ、教えて下さい。
好きな方はどんな女性ですか?」
「!っ……」
私が質問すると、一瞬にして真っ赤になる彼。
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