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第13章 (2)ヴァロン(マオ)side
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しおりを挟む俺には幼い頃から全てのゲームや遊びにおいて、最強の見本になる人物が側にいた。
マスター・ギャラン。
あの人から学んだ娯楽の知識全てを使って、俺はこの勝負に挑む。
「……はい。この馬に決めました」
俺は微笑みながら、メインレースを走る馬全ての名前が書かれた新聞の一部分を指差した。
それを見て、ロイス様は目を見開いて固まる。
「1枠1番、レインボーデイ。
今日のメインレース、真っ先にゴール板を駆け抜けるのはこの馬です」
俺の言葉を聞いても、ロイス様は信じられないと言った表情で新聞と俺を交互に見ていた。
それもその筈。
俺の選んだレインボーデイの人気は、最低人気。メインレースで1番人気がなければ、期待もされていない馬だ。
しかも、7歳の雌馬。
勿論、大器晩成という言葉がある通り馬は若いから走るという訳ではなく、年を重ねて強くなる馬もいる。
が、この馬が最後にレースで勝ったのは5歳の頃。完全にもう成長は止まっていた。
そして、雌馬。
人間同様、雌馬はどうしても雄馬に筋力や体力が劣り、雌馬限定のレースならまだしも今日のレースのような混合戦では間違いなく不利。
「……は、ははっ……ははははッ!」
俺の予想を聞いて、暫く呆気に取られていたロイス様は大声で笑い出した。
「はははっ……!
マ、マオ君!冗談はよしたまえ!
そりゃあ、私のキサラギに他の馬が敵わないと分かっていても。そんな投げやりな……」
「いえ。僕は本気ですよ」
「……」
「投げやりな気持ちでも、適当でもありません。
勝つのはレインボーデイです。
この馬以外に、優勝馬はありません」
俺の言葉に、ロイス様から笑顔が消えて……。
睨むような目付きで見つめられる。
「……君には失望したよ。
もう少し期待出来る、賢い男だと思っていた」
ロイス様は呆れて溜め息を吐くと、席を立ち上がった。
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