夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
46 / 151
第13章 (1)ヴァロン(マオ)side

1-5

しおりを挟む

「マオ、準備は整ったか?始めるぞ」

「……はい、アラン様」

会議室の扉がガチャッと開きアランが入ってくる。
俺はなんとかマオに戻ると、震えかけた資料を配る手と心を落ち着けて微笑む。

すると……。
そんな俺を励ますように、窓から差し込む春の陽射しが会議室を明るく照らしてくれた。


「っ……」

思わず窓の外を見ると、陽の光を浴びた桜の花びらが可愛らしく輝いて、花吹雪となって舞っている。

”頑張って!”って、聴こえた気がした。
まるで、俺を応援してくれているように……。

暖かい陽だまりが包んでくれて、俺を穏やかな気持ちにしてくれる。


「……。
真っ直ぐ、最短で帰る」

気付いたら、俺はそう小さく呟いていた。


「マオ、どうかしたか?」

「いえ、何でもありません。
……皆様、お待たせ致しました。
これより定例会議を始めます。ご着席下さい」

いつの間にかすっかり気持ちの落ち着いた俺は、微笑んでいつものように会議を進行した。


……。

結婚して初めての結婚記念日も、アカリの誕生日も、祝ってやれなかった。
桜の季節が来て、”また来年も来よう”って約束したお花見も叶えてやれなくて……。
初めてのお産も、アカリを独りにして……。

ヒナタの産声も聴いてやれなければ……。
生まれて来る瞬間も、傍で迎えてやれなかった。


アカリ、ヒナタ。
本当にごめんな。

長期任務を決めた時に、分かっていて覚悟していた筈だったのに……。
二人の写真を見たら、やっぱり寂しくなった。


でも。
くよくよしてる暇なんて、ないよな。
自分の信じる道を歩くと決めたじゃないか。
立ち止まらず、前に進め。

大切な家族の為に、俺は強くなる。

……
…………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。

石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。 失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。 ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。 店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。 自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。 扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。

離縁しましょう。あなたの本当の恋は、その聖女様なのでしょう?

ネコ
恋愛
私は辺境貴族の娘として、武名高い王国騎士団長と婚約していた。 けれど、彼が戦場で救われたという“聖女”が現れたとたん態度は急変。 「彼女こそ真の伴侶だ」と熱を上げ、私の前では居心地悪そうに黙り込む毎日。 ある日、とうとう決定打が来た――「お前と離縁して聖女を護りたい」。 ならば遠慮なく離縁しましょう。私はさっさと判を押し、新しい道へ進む決意を固める。 彼が「やはりお前も必要だ」なんて言い始めても、もう遅いのです。

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

【完結】貴族の矜持

仲村 嘉高
恋愛
「貴族がそんなに偉いんですか!?」 元平民の男爵令嬢が言った。 「えぇ、偉いですわよ」 公爵令嬢が答える。 「そんなところが嫌なんだ!いつでも上から物を言う!地位しか誇るものが無いからだ!」 公爵令嬢の婚約者の侯爵家三男が言う。 「わかりました。では、その地位がどういうものか身をもって知るが良いですわ」 そんなお話。 HOTで最高5位まで行きました。 初めての経験で、テンション上がりまくりました(*≧∀≦*) ありがとうございます!

【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。 隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。 そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。 ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。

処理中です...