夢の言葉と陽だまりの天使(下)【続編③】

☆リサーナ☆

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第13章 (1)ヴァロン(マオ)side

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【アランの会社/会議室】

会議室の窓から見える桜が綺麗に咲いた頃。
定例会議でアランの会社を訪れているアルバート様が、たくさんの人達に囲まれて何やら話をしている光景が俺の目に入った。

準備の為にアランよりも早く会議室に来た俺は、アルバート様と目が合うと軽く会釈をする。

すると……。


「おお、マオ君。
君も、孫とひ孫に甘いじじ馬鹿だと思って……。見てくれんかね?」

アルバート様は人集りを抜けると、そう言いながら俺の元に来て一枚の写真を差し出してきた。

……。
その写真を見た瞬間。
一瞬、”マオ”だという事を……忘れそうになった。


「……可愛いだろう?
先日、朝陽が登る頃に産まれたんだ。
元気な、女の子がね」

写真に写っているのは、愛おしい妻と……。
小さな、赤ん坊。

大好きな笑顔で微笑むアカリと……。
その腕に抱かれた、産まれて間もないヒナタの姿。


呼吸が、止まる。


”アカリにそっくりな女の子がほしい。”

俺の言葉通りに、アカリにそっくりで……。
本当に、天使なんじゃないかって思うくらいに俺の目には輝いて映った。


///っ……ヤバい。
直視、出来ねぇ……ッ///。


「……。本当……。
可愛い、ですね……」

しっかり見たいのに……。
これ以上眺めていたら、嬉しくて、愛おしくて、ニヤケながら、泣いてしまうと思った。

何とか普通を装って笑顔を作ると、アルバート様は穏やかに微笑んで……。
俺の上着のポケットにこっそり写真を入れると、小さく呟いた。


「……早く帰って来なさい。
子供はすぐ大きくなってしまうぞ?」

俺の肩をポンポンッと叩いて、さり気なく他の人の所へ歩いて行くアルバート様の背中を見送ると、俺も平然と仕事に戻り、会議の為の資料を机に並べ始める。


でも一瞬……。
俺の心の中を嬉しいような、寂しいような……。
複雑な気持ちが渦巻いた。
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